獄中の作
苦冤( くえん ) 洗ひがたく 恨み禁じがたし
俯( ふ )すれば即ち悲痛 仰げば即ち吟ず
誰か知る 松柏後凋 ( こうちょう )の心
啓発録
橋本 左内 (著)
講談社 (1982/7/7)
P218
P219
わが藩公(春嶽)の無実を晴らすこともできず、痛恨まことに禁じがたいものがあり、獄中に俯仰して、ただ悲痛沈吟するだけである。
さて昨夜、江戸の町に霜が降りたが、霜にあたっても凋(しぼ)むことのない松柏の節操を、今の世に知っているものがいるであろうか。
まことに幕府の威におののいて、みな今までの主張を変えてしまう、卑怯な人間ばかりが多いことである。
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