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内臓感覚 [医学]

 ストレスの専門学会で北山修を呼んで講演してもらった時のことを思い出す。「帰ってきたヨッパライ」「イムジン河」のザ・フォーク・クルセダーズの一員であった北山修だ。
芸能活動は若いうちに切り上げて、精神分析を専門とする精神科医になったのである。
講演の中で彼は、情動を表現するのに、神体用語を使うこと、特に、消化器の用語を使うことを日本人の特徴として挙げていた。

内臓感覚―脳と腸の不思議な関係
福土 審(著)
日本放送出版協会 (2007/09)
P14

DSC_4574 (Small).JPG求菩提山

P190
プロローグにも記した通り、日本では昔から、腹黒い、腹が立つ、腹の内を探る、腹わたが煮えくり返る、腹芸、吐き気を催す、虫酢が走る、飲めない(話)、喰えない(奴)、味のある(文章)、消化しきれない(課題)、など、消化器の言葉を使っていろいろな感情・情動を表現している例がたくさんある。
「大鏡」の序に、「おぼしき事言わぬは、げにぞ、腹ふくるる心地しける」とあり、「徒然草」第十九段にそれが引用されている。
若者は怒りを「むかつく」と消化器症状で表現する(著者としては正しい日本語を使うことを勧告する)。

日本人は知らず知らずの間に、情動の本質を理解しているために、このような言語表現をしているのであろう。
 しかし、これは日本だけに限ったことではない。英語にも「ガット・フィーリング」(gut feeling)という言葉がある。直訳すれば「腸の感覚」だが、これは「直感」あるいは「直観」という意味だ。
「ガッツ」(guts)となると根性である。英語では上品な言葉とは言えないが。
 中国ではどうか。杜甫の贈衛八處士という詩の中に、
「少壯能(よ)く幾時ぞ、鬢髪各々已(びんぱつそれぞれすで)に蒼(そう)たり 旧を訪(おとな)へば半は鬼と為(な)ると 驚呼して中腸熱す」とある。
古い友人を訪問してみたら大半がすでに死んでしまっており、えっと驚き、腸が熱くなった、というのである。~中略~
 人間が感情・情動を腸の感覚で言語化するのは比喩にとどまらず、その中に、科学的な真実が含まれているからであろう。

P195
虫の知らせ、というものがあるが、その虫とは、腸の中にいる虫のことである。
腸感覚、腸のほかの内臓感覚、筋肉の固有知覚、化学受容(血糖値の上昇の感覚など)などの、普段は意識されないが、重要な作用を持つ身体からの感覚をまとめて、内的感覚(インテロセプション)と呼ぶこともある。
 我々が意識しているか、いないかにかかわらず、身体からの情報(ソマティック・マーカー)が、情動形成に重要であることは多分間違いなかろう。その上、これらの身体からの情報が、意思決定や行動選択にまで使われているかもしれないのである。


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