SSブログ

若いもんは働きませんで [日本(人)]

小笠原 しうとめの嫁いじめでありますか?昔は多かったといいますが、そういわれて見ると、この村にはなかったようで・・・。
~中略~
金田茂 そうでございますのう、この村で七十年の間に姑と嫁が仲がわるくて家の中がごたごたするのが目立っていたというのは今の話ぐらいでありましょうか。うわさのたつ家もありますが、それはあたりまえの家ではなうて、どこかすこし違うております。口ではよく姑の嫁いじめと言いますが、さてとなってさがしてみると案外ないもんですのう。それより嫁の姑いじめのほうが多いのではないかな。
小笠原 それはある。どこの家でも大なり小なりあります。ただ女のくらしがらくになりました。それだけどうらくになりましたが・・・・。
金田金 婆さんはまた名おうてのキッチリ屋、嫁が困るという話じゃが・・・・。
小笠原 そんなことはありません。嫁は嫁でわたしはわたしです。嫁に気に入らん事をすすめはせん。はァ、わたしは子どもの時からそうであったから、今でも腰巻は日かげに乾す。どうもお日さまによごれたものを向けては申しわけないと思っていますで・・・・。しかし、私は嫁にはそうせえとは言いません。死ぬる時にはいやでも嫁の世話にならにゃァならんのに、なんで嫁の気に入らんようなことがいわれましょうかいの。あんたでもおなじでしょうが。
金田金 そうよのう。わしも子供にがみがみ言いとうないから隠居したんで・・・。一人でおれば誰に遠慮なしに働けるで・・・・。
小笠原 そうでしょうが、わしら働き通しに働いて来たもんは、年をとっても働いておらんと気がおさまらん。そりゃあもう性分じゃから仕方がないわの。誰が何というても働かしてもらわにゃァ・・・・。
金田金 ほんに、楽しようと思うて隠居したんじゃないんだから。
小笠原 そりゃァ、今の若いもんは働きませんで・・・・。


忘れられた日本人

宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)
P80


忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Kindle版

 




海龍王寺DSC_1021 (Small) (8).JPG海龍王寺 


タグ:宮本 常一
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント