健康なんか気にしない [養生]
ここに興味深いデータがある。
1970年代から80年代にかけて、フィンランドで行われた調査だ。
38歳から54歳までの男性会社員に健康診断を行い、そこから高血圧、高コレステロール、喫煙など、危険な要素を持っている人、1222名を抽出し、それをほぼ半数ずつ、2つのグループに分けた。
片方のAグループには、食事、運動、禁煙などの細かい指導を行い、それでも血圧やコレステロールの数値が下がらない場合は、薬を与えた。
もう片方のグループには、積極的な治療や指導は何もしなかった。要は、放っておかれたのだ。
5年後、どうなったか?
確かにAでは血圧もコレステロールも下がった。
しかしBは死亡が5人なのに、Aは10人と、Bの2倍になっていたのだ。心筋梗塞にかかった人も、Bの9人に対し、Aは19人と、これも2倍である。
この結果からフィンランドの研究者は、
「ライフスタイルの改善はよかったかもしれないが、薬の使用はよくなかった可能性は否定できない」と述べている。
~中略~
健康に無頓着でも、マイナス思考にとらわれないことが、結局体にはいいのだ。
フィンランドの研究は、行き過ぎた健康志向に対する皮肉であると同時に、警鐘でもある。
今、私たちに求められているのは、血圧をはじめ、過度に健康を気にしないことなのだ。
高血圧はほっとくのが一番
松本 光正 (著)
講談社 (2014/4/22)
P153
中川 先生は健診といったものは受けられているんですか?
養老 行かないですね。
中川 私も受けたことないんですよ。
養老 健診を受けないことで起こってくる結果は、こっちが背負うしかないんだから、がんになったらなんて、そんなこと気にしてないです。体の具合が悪ければ、どっかで警告がくるわけですからね。それが手遅れであれば、僕自身がバカなんだからしょうがないですよ、それは。
中川 ただ私、どうせ死ぬならですね、やっぱりがんがいいと思っています。
自分を生ききる -日本のがん治療と死生観
中川恵一 (著), 養老孟司 (著)
小学館 (2005/8/10)
P66
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