利に合ざれば而ち止まる [経営]
夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり。命(なず)けて費留(ひりゅう)と曰う。
故に明主はこれを慮り、良将はこれを修め、利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。
主は怒りを以て師を興すべからず。将は慍(いきどお)りを以て戦いを致すべからず。利に合えば而(すなわち)動き、利に合ざれば而ち止まる。~後略
新訂 孫子
金谷 治 (翻訳)
岩波書店; 新訂版 (2000/4/14)
P171
サンクコストとは、「埋没費用」のこと。英語で書くとsunk costですね。埋没、というのは、文字どおり、何らかの行為に投資した資金のうち、その行為を中止したり、コミットメントを縮小したりしたとしても、絶対に回収できない費用のことを指す用語です。
~中略~
これが、サンクコストの錯覚です。人間というのは、すでに投資してしまった、という事実に引きずられやすく、合理的な判断ができなくなってしまう傾向があるのです。
恋愛や結婚生活でも、同じ現象が見られることがありますね。
~中略~
サンクコストの錯覚は、「コンコルド効果」という名前でも知られています。
脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
P117
サンクコストとは、簡単にいえば「覆水盆に返らず」ということだ。サンクコストを理解していないのは日本の組織によく見られる傾向だ。
~中略~
このように、日本企業は終わってしまった過去と決別をするのが本当に苦手なのだ。
ビジネスとしては、その100億で出血は止めておくべきなのだ。過去にこだわりその過去の遺物に追加の投資をして傷を深めてしまうことは、さらに愚かな行為となる。
終わったことにこだわって、未来を無駄にしてはいけないのだ。
頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法
田村耕太郎 (著)
朝日新聞出版 (2014/7/8)
P34
患者が抗がん治療をやめたくない理由に、10年間もつらい治療をして来たのに、それを中止すると、治療が無駄になるという思いがある。
これは、行動経済学でサンクコストの誤謬と呼ばれているものの一つである。サンクコストとは、埋没した費用という意味で、過去に支払った費用や努力のうち戻ってこないもののことを言う。 ~中略~
この患者の場合、10年間の抗ガン治療をしたという事実は、これからの治療法を選択する際に医学的には全く無関係な状況になっている。しかし、ここまで治療してきたのだから途中でやめるのはもったいない、という感覚を患者がもっている。過去の抗がん治療はすでにサンクコストになっていて、今考えるべきことは、これから先のことだけということを理解してもらうことである。
この医師は、患者がサンクコストの誤謬に陥っていることを探り出し、患者の不安感を理解した。そして、冷静に判断できる家族とともに、治療における重要なこととして、今後の治療によるプラス面とマイナス面を説明し、抗がん治療を行うことで発生するおそれのあるコストを強調した。つまり、患者に対し、過去のコストよりも将来の費用と便益で考えるように促しているのである。
医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者
大竹 文雄 (著), 平井 啓 (著)
東洋経済新報社 (2018/7/27)
P5
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