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ウイルダネス wildderness [言葉]


ウイルダネスは、日本語になりにくい言葉である。敢えて訳せば原生自然。英和辞書で訳されている原野、荒野、砂漠、不毛の地などとはニュアンスが少しちがう。
 建国以来の急速な開発によって、大部分の原生自然が失われてしまったアメリカ国土で、とくに生態的に重要な地域、まだ比較的人手が入っていない土地でこれ以上の開発行為を避ける必要がある地域を、ウイルダネス・エリアとして指定し、保護しようという法律「ウイルダネス・アクト」が連邦政府にによって制定された。
一九六四年のことである。
 アメリカが国立公園とともに、世界に誇るすぐれた自然保護制度である。
 それまでウイルダネス管理体制は合衆国国立公園局、野生生物局、森林局、国土保全局が、それぞれ個別に管理し行ってきた。
この法律を制定することによって、相互横断的な共通理念を持ち、縦割り行政の弊害を取り除くことも、法制定の大きな目的のひとつだった。
 ウイルダネス・エリアには、例外はあるものの、人工施設は原則としてない。エリア内の伐採や採掘、その他の開発行為も禁止されている。ただひとつ、自然を楽しむ人のためのトレイルだけは整備されている。徒歩と乗馬だけが、ウイルダネスエリアで認められる移動手段である。

自然の歩き方50―ソローの森から雨の屋久島へ
加藤 則芳
(著)
平凡社 (2001/01)
P204


DSC_1774 (Small).JPG吉野ヶ里遺跡

P206
 ウイルダネス・エリアでは、基本的にどこでキャンプしても自由である。
キャンプ指定地以外でのテント設営を認めない日本の国立公園とは、まったくの逆の考え方である。
残念ながら自然保護への認識が遅れ、マナーが悪いキャンパーがいまだに多い日本でキャンプ自由化をはかれば、結果は目に見えている。
 むろんアメリカでも、キャンプエリアを指定しないかわりに、さまざまな厳しい規制(レギュレーション)がある。たとえば、テント設営は水辺からもトレイルからも一〇〇フィート(約三〇メートル)以上離れていなければいけない。
水辺で炊事洗濯はしてはいけない。排泄も一〇〇フィート以上水辺から離れたところに穴を掘る。かつ、紙は持ち返る。
 場所によって異なるが、標高1万フィート(約三〇〇〇メートル)を超えるエリアでの焚火は一切禁止。燃やす薪は、落ちている小枝に限る。たとえ枯れた倒木であっても、折ったり伐ったりしてはいけない。
等々、こと細かなレギュレーションが定められ、周知徹底されている。








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