蓑笠 [雑学]
いずれにしても祭りに携わる者の蓑笠は、決して南の島ばかりの奇風俗ではなかったので、おそらくは「月笠着る、八幡種播く、いでわれらは」と高く唱えて神を送ってきた時代よりも以前から、近くはわれわれの田舎の盆の月夜にいたるまで、神に代わって踊り舞う者の、必ず隠れ笠によって現世と遮断し、まずわが心霊を浄くかつ高くせんとした、素朴な信仰のはじめの形であるように思われます。
~中略~
もとよりノロと称する人間の女性が、かりに神を装うて出るのではありますが、信仰厚き者の笠の内の心持ちは、扮するというよりもむしろ成るという方が当たっていたようでありまして、かくのごとき精神作用にはまたコバの葉の力が多いのであります。
海南小記
柳田 国男
(著)
角川学芸出版; 新版 (2013/6/21)
P248
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