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来談者中心療法(Client-Centered Therapy) [雑学]

  アメリカの臨床心理学者カール・ロジャース(一九〇二~一九八七)が創始したカウンセリングの手法は、コフートとかなり似ています。
 ロジャースが提唱した心理療法は「来談者中心療法」と呼ばれており、現在もカウンセリングの分野では主流となっています。
一九八二年にアメリカ心理学会が行なった調査で、ロジャースは当初、自分のやり方を「非指示的療法」と呼んでいましたから、そこだけ見ても、コフートと共通点があることはわかるでしょう。患者(ロジャース学派ではそれを「クライエント」と呼びます)にあれこれ指示をするのではなく、相手の話をよく聞くことによって心のあり方を変えていくのが、この流派の基本です。
 そのためにはロジャースが掲げたキーワードが「傾聴・受容・共感」でした。
「来談者中心」という言葉どおり、そこではカウンセラー側に多くの知識や権威性は求められません。つまり、「先生」である必要はない。
カウンセラーに求められるのは、クライエントに対する肯定的な関心や共感的理解といった「態度」です。
~中略~
 しかし、当たり前ですが、ロジャースとコフートの心理療法はまったく同じではありません。まず、対象としている病気の種類が違います。
ほかの心理療法もおおむねそうですが、ロジャースの来談者中心療法が効くのは、基本的には神経症レベルの病気。それに対して、コフートが治療対象としたのは、自己愛性パーソナリティ障害をはじめとするパーソナリティ障害レベルの患者です。
同じ心の病でも、コフートのほうがより症状の重い人を想定して理論を着ずているといれるでしょう。

P155
 ロジャース流の来訪者中心療法は、カウンセラーが「こういうふうに考えてみたらどうだろう」というコーチングを積極的に行います。
それに対して、自己心理学の場合は基本的に相手の話を聞き、受け入れる。それによって相手の心が自然に変わっていくのが、理想なので、治療者が自分の考えを押しつけることには消極的です。
 そはいえ、いわゆる「自己開示」をコフートが治療者に禁じているわけではありません。
自己開示とは、治療者が患者に「自分はこう思う」「自分はこう感じた」という治療者のリアルな考えや感情を伝えること。
フロイト的な精神分析の場合、最終的には自分の「解釈」を患者に伝えるわけですが、相手の話を聞く段階ではほとんど自己開示をしないのが一般的です。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)
P76


DSC_1781 (Small).JPG如意輪寺



 面接のなかで、自己開示といわれるような医師側の家族関係や生活ぶりなどをテーマにしないことも必要です。
プライベートなことを話題にするのは、相手との距離を縮めるための有効な手段ですが、患者さんは自分だけが気を許してもらっているのだと受け取り、プライベートな相談や個人的な話をしやすい状況を作ってしまいます。
このような”禁じ手”を使うと、医師―患者関係の枠組みを逸脱することになり、スムーズな治療関係を崩すことになります。
 家族、友人などプライベートな関係と医師と患者の関係は異なるということを、十分に意識しなければなりません。

精神科医はどのように話を聴くのか
藤本 修 (著)
平凡社 (2010/12/11)

P149



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