寺田虎彦 [雑学]
寺田(住人注;寺田虎彦)が、ここまで防災に熱心であったのは、彼が、津波常襲地である高知の出身であったことと無関係ではない。
なかでも「種崎」という高知市街に近い海岸の地が、彼の思想形成に大きくかかわっているように思われる。
種崎は、坂本龍馬像のある観光地・桂浜から幅約三〇〇メートルの蒲戸湾口をはさんで向かい側にある風光明媚な砂浜である。
寺田は中学時代の一八九二(明治二五)年頃から、種崎へ海水浴に出かけた。~中略~
種崎は、寺田の原風景となっており、「海水震動」や「海鳴り」など、海の自然現象に関する科学的研究を行なう素地を作っている。
実は、この種崎こそが、高知市近郊でも、津波による最も悲惨な人的被害が見られた地であった。多感な寺田が、この地に長く滞在して、それを意識しなかったはずはなく、種崎が寺田の防災思想の母なる地となった、と、私はみている。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P58
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)
- 作者: 磯田 道史
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 新書
寺田虎彦邸跡
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