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魚食文化の崩壊 [社会]

そこまでして、ウナギを食べなければならないのか。「食べられなくなる」と騒ぐ前に、そもそもの前提を考える時期ではないでしょうか。
 もともとウナギは自然の川の賜物で、希少な天然資源でした。美味しかったので、値段も高かったのは当然です。しかし高価格に惹かれて、日本で養殖が開始されました。~中略~
 食文化を守るために、養殖業者は規制を順守する。私たち消費者は、厳しい状況で踏ん張っている業者を応援するために、すこしぐらい高くても国産ウナギを選んで食べる。
行政は、早急に河川環境の回復に努める。未来にウナギという食文化を遺すには、そうやってみんなが少しずつ努力するしかないのです。


日本人が知らない漁業の大問題
佐野 雅昭 (著)
新潮社 (2015/3/14)
P14


日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

  • 作者: 佐野 雅昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 新書



 


IMG_0067 (Small).JPG旭川市旭山動物園

P16
 こんなバブル時代の贅肉みたいな食材(住人注;マグロやウナギ)に頼らなくても、日本の沿岸には多様な水産物がいくらでも存在しているし、アジやサバでも鮮度さえよければこの上なく美味しいものです。
しかもはるかに安く、大量に供給できる。金持ちでなくても楽しめるこうした近海の鮮魚こそ、日本にとって真に重要な存在なのです。


P18
 大西洋クロマグロの輸入が無事だったとしても、日本から漁業者がいなくなってサバやアジサンマなどが食べられなくなるとしたら、日常生活でははるかに大きな問題です。
未来の日本人の食生活が根底から壊れ、残るのは冷凍輸入魚ばかりの食卓でしょう。まさしく「魚食文化の崩壊」です。


P135
 図28のように、二〇〇九年以降は肉に完全に追い抜かれ、日本人は魚よりも肉を多く食べる、文字通りの「肉食系」民族となっています。
「魚離れ」の傾向は、年齢層で大きく異なります。総務省の調査では、生鮮魚介類の消費量はこの一〇年間で六〇代以上の高齢者世帯ではそれほど減少していませんが、五〇代以下の世帯では三割近くも減少している。また二〇代世帯では全体平均の半分程度で、六〇代以上の高齢者世帯と比較すると、実に四分の一以下にとどまります。


P146
日本という小国が食料を安定的に確保していこうとすれば、国産水産物を食べ続けることが不可欠です。~中略~
 そのためには国内漁業の経営がきちんと自立すること、つまり十分な漁業所得が必要ですが、それを可能にするのが消費者です。私たちだけが、国産魚を買うことで漁業者に所得をもたらすことができるのです。
水産物の栄養価や機能性だけを考えれば、輸入品でもいいのでしょうが、それでは日本の漁業を守っていくことができません。新鮮な美味しい魚を食べようとすることがそのためには必要です。
 こうした文化的な価値を大切にしようとすると、ある程度は、効率の悪さを覚悟しなければなりません。
価格もサーモンのような輸入品と比較すれば高くなる。しかしこのような伝統的水産物こそ、将来に残すべき魚食文化を担うものなのです。


P185
 値段が付かない雑魚でも、よく知られた魚より美味しいものがたくさんあります。しかし、養殖の餌になるならまだいい方で、多くがそのまま捨てられている。雑魚つまり「未利用魚」の有効利用は水産業にとって大きな課題となっています。
~中略~
 一般に雑魚と呼ばれる魚たちはサイズが小さく、処理に手間がかかります。大きな魚も小さな魚も捌く手間―ウロコを取り、三枚に下ろして骨から身を外す―は大して変わりません。一尾は一尾なりの手間ひまかかります。手間はすなわち人件費、コストです。小型魚の利用は現代社会ではコストが高いのです。敬遠される所以です。
 手間ひまをコストと考えなかった時代には雑魚も美味しく食べられ、資源も有効に利用されてきました。結果、無駄のない供給と需要が実現していたのです。これも食文化の一つでしょう。
しかし現代では小型の魚がきちんと食べられる機会が社会から消失してしまいました。


P189
 例えば輸入サーモンばかりを食べるのではなく、国産サケの旨さを味わってみることから始めてみるのはどうでしょうか。
 春には道東のトキシラズがあります。脂の乗った天然サケの旨さを味わってしまうとチリ産ギンザケやトラウトの塩蔵品などは、この足下にも及びません。
初夏には三陸の養殖ギンザケを刺身で食べてはいかがでしょうか。刺身用の輸入サーモンと比べても、鮮度は抜群です。秋には鉄板にバターを溶かし、アキサケの切り身をチャンチャン焼きで食べる。~中略~
 日本には四季季節感あふれる折々のサケがいて、それぞれに適した料理があります。輸入サーモンは、その端境期に食べれば十分でしょう。



日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

  • 作者: 佐野 雅昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 新書




魚は一匹で買って、家で刺し身にする、自分でおろすものだ、と(住人注;筆者は母からきいて育った)。
タイを一匹おろせば、頭からしっぽまでほとんど食べられます。一匹のタイが、いろんな料理になって、でてきます。


患者本位の病院改革
新村 明(著),藤田 真一(著)
朝日新聞社 (1990/06)
P48




患者本位の病院改革 (朝日文庫)

患者本位の病院改革 (朝日文庫)

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1990/06/01
  • メディア: 文庫




 なぜ、日本の漁師はこのような非合理と思えるような行動をとつのだろうか。
それは、漁業では獲れるだけ魚を獲ってもいいのではなく、漁業資源を守るための規制が存在するからだ。具体的には、魚種ごとに総漁獲可能量(TAC)が決められて資源管理が行われている。
オリンピック方式では、漁期と漁獲量の上限が決められているだけである。漁民は、漁期が始まると一斉に漁をはじめ、漁獲枠が一杯になると漁期が終わってしまう。みんなが一斉に魚を獲ると値段が下がることがわかっていれも、漁師は誰よりも早く猟場に行くことを目指し、漁期の最初の頃に集中して獲るのである。
そのために、船の本体がぼろぼろであっても、スピード狂のように高性能エンジンを積み、GPSを装備するのだ。スピードさえ落とせば、原油の値段が上がっても十分に漁をすることができるにもかかわらず、スピードを落とすことができない仕組みになっている。
~中略~
 奇妙なインセンティブ(誘因)をかけられている漁民も、その結果高い魚を食べさせられている消費者も、オリンピック方式という規制の犠牲者なのである。


競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
Pⅸ




競争と公平感 市場経済の本当のメリット (中公新書)

競争と公平感 市場経済の本当のメリット (中公新書)

  • 作者: 大竹文雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/04/03
  • メディア: Kindle版



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