ファストフィッシュ [社会]
ファストフィッシュ(Fast Fish)は「現代の魚のファストフードを目指す。ファストファッションのように、気軽に楽しめるおいしい魚食という意味」と定義されています。
「ガイジン」化する若者に焦点を合わせた消費拡大策は正しいし、そこを何とかしなければなりません。
しかし、「ファスト○○」というのは、そんなに持てはやされるべきものなのか。グローバル化・大規模化・効率化を徹底的に追及することで低コスト化と企業利益の最大化を図るというのが、ユニクロに代表されるファストファッションでした。それと同じような発想で、水産物の消費拡大を考えるのはどうなのか。
本当に「魚の国のしあわせ」にたどり着けるものでしょうか。
すでにスーパーの水産物売り場では、「ファストフィッシュ」のロゴマークが付いた商品がたくさん並べられています。これらの中には、「安価な輸入魚を骨取り加工し、冷凍・解凍を経て失われた旨味をチーズやガーリックなどのスパイシーな洋風ソースで補った、電子レンジ加熱用のレトルト食品」などもみうけられます。魚本来の旨味が抜け、骨抜き作業で形崩れしたものを結着剤で形を整えているから、魚には合わない濃いスパイシーなソースやタレが必要になるのです。
複雑な加工や国際的な物流にはコストがかかります。しかし「ファスト」であるためには、安く売らなければなりません。当然、原料費は余計に低く、抑える必要があります。多くが安価な輸入物を原料としており、国産で質の高いものはなかなか使えません。コストの低い海外での加工も見られます。
日本人が知らない漁業の大問題
佐野 雅昭 (著)
新潮社 (2015/3/14)
P137
P142
大手スーパーの担当者に聞いても、ファストフィッシュは一度は売れるがリピートがない、とこぼしていました。やはり魚は美味しくなければ売れないし、結局は儲からないのです。
「魚の国のしあわせ」を消費者の立場で考えれば、それは輸入魚を安く大量に消費することではありません。
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