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可用性バイアス [言葉]


誰がどういう選択をしたかという話は、私たち全てが自分自身あるいは自分の住む世界をどう理解するかに強力な影響を与える。
こうした心情の形成は、親が話してくれる物語を聞いたり、寝る前に童話を読んだりする子供時代にすでに始まる。
さらに大きくなるにつれ、同僚や友人、知り合いの経験談も耳にするようになってくる。また、本や雑誌、映画、テレビそしてインターネットでも様々な話を見聞きする。
そして、このような話を聞くとき、私たちはその話の中に自分自身を見いだそうとする。同じ状況だったら、自分の人生はどんなだろう、自分だったらどんな選択をするだろう、と想像するのだ。
こうした個々の話が私たちの思考に与える強い影響力のことを、認知心理学者は「可用性バイアス」と呼ぶ。ある種の物語や「クチコミ」は、それがドラマチックで珍しい話であればいっそう、私たちの心にしっかりと刷り込まれる。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD (著), Pamela Hartzband MD (著), 堀内 志奈 (翻訳)
医学書院 (2013/4/5)
P19


決められない患者たち

決められない患者たち

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 単行本

 



DSC_1944 (Small).JPG旭川市旭山動物園

P20
こうした他人の話には安心感を与えるものもあれば、逆に不安感をあおるものもあるが、いずれにしてもその人の志向に与える影響は大きい。
ありありと感じられるそれぞれの話は、起るかもしれない未来の姿を映した鏡のようなものとなる。
おそらく可用性バイアスは、患者が治療の選択をするとき最初にどう判断するかに最も強く、普遍的に影響している力だ。

P148
医療上の決断を下す上で、こうしたアプローチ(住人注;数字よりも、治療してどうだったとかその後の生活についての経験談といったひとの話を判断基準にする)をとることに懸念を抱く研究者もいる。あくまでも経験談は「nは1」の個人に限定した話に過ぎず、これはその強い影響力故に考えが歪められてしまう可能性、すなわちを招く危険がある、というのだ。
だが、将来実際に経験することを予見することがいかに難しいかを示した画期的な研究著作で知られるハーバード大学のダニエル・ギルバートは、他人の個人的な経験を聞くことがこうした決断を下すとき、時に最も有用であることを明らかにしている。
とりわけサイエンス誌に掲載された「隣人のアドバイスの驚くべき力」と題した論説は注目に値する。
その中で、他人の経験を知ることによって自分自身が将来体験するであろうことを正確に予測できる可能性が高くなることをギルバートは示している。そこで鍵となるのは、もちろん、自分と似たような境遇のひとを見つける、ということである。


決められない患者たち

決められない患者たち

  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 単行本

 


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