ヘルシー・ワーカー効果 [言葉]
たとえば有機化合物の影響では,管理設備が不十分な化学工場で働く高ばく露作業員が調査対象となる.
しかしながら,調査ではそれらの作業員のほうが,有機化合物に接触していない対照集団に人びとよりも長生きするという結果が見出されることがある.
この一見,逆説的な結果は”ヘルシー・ワーカー効果”と考えられる.ヘルシー・ワーカー効果とは,仕事に従事しているということはもともとそれじたい健康であることを示しており,厳しい労働環境でも働けるということは,もとが非常に健康だからという考え方である.
そこで,統計手法によって健康の諸条件の影響を取り除いてみると,化学物質を使う労働者は発がん率が高いことがわかった(ヒ素鉱山,製錬所,石油精製施設についての研究では3~8倍),ただ,体重や喫煙習慣など,ほかの要因がこの高い発がん率になっている可能性はつねに残されてはいる.
リスク 不確実性の中での意思決定
Baruch Fischhoff (著), John Kadvany (著),中谷内 一也 (翻訳)
丸善出版 (2015/4/26)
P72
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