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変われ!同じ場所にとどまるな!虫に負けるな! [雑学]

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 このこと(住人注;どうして昆虫はこのように多様性をきわめたのか)をかたるに当たり、まず注目すべき昆虫の特徴がある。
それは、「飛ぶこと」と「変態すること」である。
飛べない昆虫もいるし、変態しない昆虫もいるが、それらはごく小数で、大部分の昆虫は成虫期に飛翔し、成長の過程で変態を行う(写真4)。
 具体的には、九九%の昆虫(なかには進化の結果として翅を失ったものもある)は飛翔を行い、八〇%以上の昆虫は「完全変態」を行う。完全変態とは、幼虫から蛹の期間を経てまったく姿の異なる成虫にあることである。チョウを思い出していただくとわかりやすいだろう。
 いっぽう、セミやバッタのように、幼虫が大きくなり、最後に脱皮すると翅が伸び、そのまま成虫になることを「不完全変態」という。さらに翅のない原始的な昆虫であるシミなどのように、成長にともなう性成熟以外、一切の変態を行わないことを「無変態」という。
 昆虫では無変態がもっとも原始的な状態で、そこから翅をもつものが進化し、さらに変態という生活史が進化していった。

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小さな生き物が歩いて移動できる距離はたかが知れている。飛翔によって、地面の水平方向の長距離移動を可能にしただけでなく、木の上、山の上など、垂直方向の移動も可能にした。この移動によるさまざまな生活環境への移動と適応が多様化の引き金となった。
 また、飛翔によって天敵から容易に逃れることができるようになったり、遺伝的に離れた(近親ではない)配偶者と容易に出合えるようになったりした。

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 それでは、どうしてこの変態が昆虫の多様性に影響を与えたのだろうか。答えは幼虫と成虫の生息環境の違いにある。幼虫と成虫が「分業」すること、そして生活環境を違えることに意味がある。
 幼虫は餌の豊富なところで食事に専念し、確実に成長を遂げる。そして、これは飛翔能力の獲得とも関係するが、成虫になって、別の場所に(多くの場合、飛んで)分散し、近親者のいない場所や、ほかのよりよい生息環境に産卵する。
 もしこれまでと違う生活環境に適応できれば、それは新たな種の誕生につながる。
 反対に、変態をしないとどうなるだろうか。昆虫のなかで飛ぶ進化を遂げていないのは、原始的な昆虫であり、変態を行わないシミ目やイシノミ目のなかまである。
 これらは移動分散に乏しく、幼虫と成虫が同じところに暮らし、生活環境も比較的単調である。そのため、どの種も似たような姿をしており、種類も少ない。これらの事実は、飛翔や変態が昆虫の多様性に与える影響の大きさを如実に表している。

昆虫はすごい
丸山 宗利 (著)

光文社 (2014/8/7)







DSC_2367 (Small).JPG北海道大学

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タグ:丸山 宗利
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