認知バイアス [言葉]
人間は、論理的に導かれた結論よりも、根拠のない、「オレはついている」「私だけには(住人注:宝くじが)当たるかも」という考えを信じてしまいがちです。「オレだけは事故に遭わない」「私だけは助かる」という思い込みも、その典型的な例と言えるでしょう。
この、根拠のない思い込みを「ヒューリスティック(仮説思考)と言い、正しい結論からそれを遠ざけてしまう先入観や偏見のことを「認知バイアス」と言います。
もしかすると、自分には当たるかも・・・・・というのは、認知バイアスのうちの、「感情バイアス」にあたります。心理的なバイアスには、ほかにも、「正常性バイアス」「同調性バイアス」「確証バイアス」「集団性バイアス」などがあります。
正常性バイアスというのは、東日本大震災後でも話題になりましたが、どんなに緊急を告げる警報やアナウンスがあっても「たいしたことはないに違いない」「どうせ誤作動だろう」と、何の根拠もなく、勝手に解釈してしまうという認知バイアスです。これに、「みんな普通にしてるし」「ひとりだけ慌てたらカッコ悪いな」などの同調性バイアスが加わると、さらに、逃げ遅れる人が多くなってしまうことになります。
~中略~
さて、確証バイアスというのは、自分の根拠のない先入観をたよりに、それにそう情報、だけを集め、そうやって集められた情報から、特定の人の性質を決めてしまうような認知バイアスのことです。
たとえば、「○○出身の人はやっぱり粗暴で仕事が雑なのよね・・・・・」といったような具合です。ここに集団性バイアスが加わると、さらに話がややこしくなってきます。
集団性バイアスというのは、個人では常識的判断が働くのに、集団のなかに入ると、どんどん意見が極端になってしまう傾向のことを言います。「リスキー・シフト」とも呼ばれます。
かつての欧州では、キリスト教とユダヤ教の教義の違いに由来した、ユダヤ人に対するある種の確証バイアスが働いていました。第二次世界大戦中のナチス・ドイツにおける反ユダヤ主義がその極端な典型例です。「ユダヤ人はずる賢い守銭奴で悪党」というイメージです。
冷静に観察すれば、ユダヤ人だって普通の人と変わらないし、非ユダヤ系ドイツ人にだってずる賢い人もいることくらい、すぐにわかるはずなのですが、集団性バイアスにより、市井の人の意見もどんどん過激になっていきました。
脳はどこまでコントロールできるか?
中野 信子 (著)
ベストセラーズ (2014/8/19)
P102
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