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老化も発生学の延長上にある [雑学]

 発生中の胚は二〇〇種もの異なるタイプの細胞に分化するだけではない。それはまた、外部および内部の形態に優雅でダイナミックな変貌をもたらす。おそらく最もドラマティックなのは最も最初の変化、原腸形成と呼ばれる変化だろう。
著名な発生学者ルイス・ウォルパートはいみじくもこう述べている。「あなたの人生で真に最も重要なのは、誕生でも結婚でも死でもなく、原腸形成である」。
原腸形成で起こるのは、細胞塊の一部が陥入して内側に入りこみ、裏打ちされたカップ状になることである。~中略~
 折り紙の名人芸のはてに、つまり、細胞の層が何度となく折り込まれ、引きだされ、ふくらまされ、引き伸ばされたあとで、きわめてダイナミックな編成のもとに胚の一部を犠牲にしてほかの部分が特に成長したあとで、何百種もの科学的にも物理的にも特殊化した細胞へと分化し、細胞の総数が億に達したあとで、最終的にできあがるのが赤ん坊である。いや、赤ん坊でさえ最終的な産物ではない。なぜなら、個体の成長―またしても、ある部分がほかの部分より早く成長する―のすべてを言うなら、成人期を過ぎて老年へと移行する過程も同じ発生学の延長上にあると見なければならないからである。
言ってみれば生涯発生学である。


遺伝子の川
リチャード ドーキンス (著), 垂水 雄二 (翻訳)
草思社 (2014/4/2)
P43





DSC_2697 (Small).JPG島根県松江市熊野大社


 

ふた昔前、NHKの番組で、免疫学者の多田富雄さんと対談したときに、多田さんがもらされた言葉です。
 「私たちの命は、生の中に死をはらんでいる。ある細胞が生まれる一方で、静かに死んでいく存在である」
 と。
 生と死とは、一線を画するものではなく、お互いに影響し、浸食しあっているものなのか、と、私は初めて気づかされました。


百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P206





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