各人の時間 [哲学]
春日 「病んだ家族、散乱した室内」(医学書院)では、「家の中では、外とは違う特殊な時間が流れている」ということを書きました。
訪問診療っていうのは要するに、扉を開くことで、そこに外部の時間を持ち込んで、それにシンクロさせることなんだ、それが治療なんだという話を書いたんです。
内田(住人注:内田 樹) それ、「死と身体」で僕が書いた時間の話とまったく同じ結論ですね。
ラカンが同じようなことを言っています。要するに、精神病の患者というのは時計が止まっているのであり、その時計を動かしてあげることが治療であるということを言っている。
「死と身体」ではそこに、レヴィ=ストロース(Claude Levi=Strauss)の話を持ってきて、「時計が動くということは交換関係のなかに入っていくことだ」って書きました。
春日 どういうことですか?
内田 「交換」って、時間概念がないとできないんですよ。こちらから「あげて」、向こうから「くる」。その間にタイムラグがあってはじめて交換になる。無時間モデルでは絶対に交換はできないんです。
「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P187
「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
- 作者: 春日 武彦
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 単行本
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