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ウニ [雑学]

 ウニが食品として高級魚介の仲間に入ったのは、腰だめでそういうのだが、ここ半世紀ほどのあいだのことではないか。
 練りウニは、古くからあったらしい。しかし生うにが京・大阪あたりで賞味されるようになるのは、にぎり鮨の移入以後のはずだから、せいぜいここ五十年ぐらいのことかと思われる。
 この点、やや不安だから、料理研究家の土井信子さんに電話できいてみると、さあ、どうでしょうか。私の父が昭和初年ごろ、九州の知人から生ウニを塩漬けにしたものを送ってもらってよろこんでいたという記憶がありますけど、といわれた。
~中略~
 しかし、樫本さんは、
「わしらの子どものころ―大正末年から昭和初年―は海へゆくとウニがごろごろしていて、だれも食べられるものだとは知りませんでしたな。むろん食べ方を知っている者もおらんかったです」
 と、言われた。そのように聞くと、ウニが高級食品として日本中にゆくわたるのはやはり江戸前のにぎり鮨のたねに使われるようになってからだろうという気に私はなってくるのだが、しかしどうだかわからない。
 さらにいえば、日本中が、マツタケをよろこび、越前ガニを美味であるといい、牛肉は松坂にかぎると言い、すしのたねにウニが欠かせないというふうに、味覚までがマスコミ化して全国にゆきわたる大現象がおこるのは、昭和三十年代以後のことではないか。
 このために、ウニが高級なものになった。
~中略~
 ここまで書いたとき、土井信子さんから電話がかかってきた。彼女はあのあと、大和郡山市に住んでおられる味の研究家の大久保恒夫氏に電話できいてくれたらしい。大久保さんは早寝で、すでに九時ごろだから床に入っておられたが、わざわざ起きて来られて、
「そんなもの、昔から食べていまっせ。奈良時代にも、平城京から出土する木簡に出ていたりしますから、食品としては古いですぜ」
 ということだった。

街道をゆく (7)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1979/01)
P143

街道をゆく7

街道をゆく7

  • 作者: 司馬遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/08/07
  • メディア: Kindle版

 

DSC_3047 (Small).JPG宗像 大島


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