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教育の経済学 [教育]

 教育の経済学という経済学の分野がある。経済学の手法を用いて、高等教育を受けた時の所得上昇効果を分析したり、少人数学級の教育効果を分析したりする分野である。
ところが、教育の専門家のなかには、経済学の視点で教育をとらえることに拒否反応を示す人が多い。
それは、教育の分野では、「より所得を稼げるようになること」ではなく、「豊かな人生を送ることができるようになること」を目的にしていて、豊かさとはお金以外の価値にあるということを教えようとしているからだろう。
だから、お金で教育の価値を測るような経済学のアプローチは許しがたいのではないかと思う。
 もっともな感情だと思うが、誤解もある。経済学者は。お金にしか価値を見出さないわけではない。もちろん、お金がなくても幸福な人生を送ることは可能だ。しかし、最低限のお金がないと、幸福な人生を送ることが難しくなるのも事実だ。実際、さまざまな幸福感に関する統計をみても、ある程度の年収までは、所得が高くなるほど平均的な幸福感も高くなっている。

競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P220

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

  • 作者: 大竹 文雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/03/01
  • メディア: 新書

DSC_3857 (Small).JPG関門海峡

 先日、品川区が通いたい小学校を子どもたちが自由に選べるシステムにしました。すると、生徒が集まりすぎる学校と、全然来ない学校に二極化した。そして、生徒の獲得に成功した学校の校長の談話が出ていました。校長曰く、「うちの学校では、教育コンテンツは商品である」「保護者たちはお客様だと教師に言い聞かせております」。
僕はそれを読んで、ほんとうに目の前が真っ黒になりました。「教育は商取引ではない」という根本的なことがこの人にはわかっていない。
 これから教育を受けようという側の子どもたちは、自分が受ける教育の内容をまだ理解していないわけです。これから自分が受けるはずの教育の意味や有用性が理解できないという事実それ自体が、彼らが「教育を受けなければならない理由」なわけです。
 でも商品の場合、そういうことはあり得ない。目の前の商品に関して、その有用性も意味もわからずに買うという消費者はいない。~中略~
 学校を「店舗」、子どもたちや保護者を「顧客」、教育活動を「商品」というふうに見立てると、どうなるか。消費者であるところの[お子様たち」や「保護者さま」の前にさまざまな教育コンテンツを差し出して、その中で、一番費用対効果のいいものを「お客様」にお選びいただく、と。
そんなことをしたら、その後子どもたちがまじめに勉強するはずがないという単純な理屈がどうしてわからないのか、僕はそれが不思議です。

最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)
P228

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 文庫


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