ラマ教 [宗教]
この仏教は、たしかにインドで成立したものだが、仏教というよりも、いわゆる左道密教なのである。
左道というのは、邪道という意だが、インド仏教の衰亡期の寸前にあらわれた派で、人間の欲望を積極的に肯定し、性交を密教原理の具象的あらわれとし、かつ秘儀とするものであった。これがインドから北上して八世紀のチベット高原に入り、九世紀以後、定着した。
モンゴルに入るのは、ずいぶん遅かった。十六世紀の明代だった。土着の宗教であるシャーマニズムを衰弱させる勢いでひろまったのは、清朝になってからである。
ラマ教にあっては、生身(いきみ)の活仏を観音菩薩または阿弥陀如来であるとするのである。
ロシアについて―北方の原形
司馬 遼太郎 (著)
文藝春秋 (1989/6/1)
P214
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