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沢 [言葉]

 沢は谷と呼ぶこともあります。水流があるかないかは関係ありません。地形的見て両側を尾根で挟まれた溝が沢であり、谷であるわけですよ。
ついでながら、沢の右岸、左岸というときは、必ず山頂側から見て右、左という決りがあることも覚えておきましょう。

~中略~
コル、峠は鞍部と同じです。スガモリ越とか大戸越とかの越(ごえ、こし)も鞍部を指します。私的には、コルは鞍部よりもさらに立っている地形をイメージしていますが、ピークとピークに挟まれた最も低い場所であることに変わりはありません。
~中略~
カヤトというのは、本来茅(かや)が茂った場所という意味だったと思われますが、今ではピーク、なだらかな斜面、尾根などの草地を指すケースが多く、茅が茂っているかどうかは関係ないと考えていいでしょう。そういえば、草つきの頂を「カヤトのピーク」と呼ぶこともありますね。

登山力アップの強化書
徳永 哲哉 (著)
西日本新聞社 (2017/6/19)
P084

DSC_9891 (Small).JPG大山 (鳥取県)
登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

  • 作者: 徳永 哲哉
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2017/06/19
  • メディア: 単行本

 諸方の同名の地名から察するに、軽井沢とは地高く、土地痩せ、「沢」を称するとはいえ、水利がよくなく、水田耕作に適しないという点で共通している。
「涸(か)れ沢が訛(なま)ったのではないか」
 というのは、吉田東吾の説である。「蓋(けだ)し水源枯渇の渓頭(註・上流)の謂(いい)ならん」という。
吉田説がどうやら妥当そうなのは、以上挙げた諸方の「軽井沢」が、そういう共通点をもっていそうだからである。
 ついでながら「沢」という地名は西日本にまれで、東日本に多く、とくに信州と東北に多い。
「さは」
 の項を「時代別国語大辞典」の上代編でひいてみると、東日本で通用していた地理用語だとまでは書かれていないが、引用例その他からみて、東国で頻用されたことばであるに近い。同辞典では「現在のサハは、大体、東日本では渓谷を、西では沼沢を指すようだが」とあるが、しかし実際には西の現代語では死語に近い。
何トカ沢という地名も、近畿以西にはほとんどない。
「広辞苑」の「さわ」の項では、
 ①低くて水が溜り、蘆(あし)・荻(おぎ)などの生いしげった地。②山間の渓谷。
 沢のうち②の字義が、信州や東北その他における沢であろう。
 軽井沢が「沢」とつく以上は「山間の渓谷」があらねばならないが、あるにはあっても、高原という地形の関係や植生などの関係がすぐ涸(か)れてしまうそうである。となると、東田東吾博士の説は、いよいよ妥当とせなばならぬかもしれない。 東田東吾は、信濃軽井沢について、
「広野なれば寒甚くて五穀生ぜず、只稗(ひえ)蕎麦(そば)のみ多し」
 と、言っている。さらに、
「此地は高爽無双にして、盛夏の避暑に宣し、近年富豪の徒、亭館を置く者多し」
 とも書いている。吉田東吾がこの文章を稿したのは、明治二十年代のおわりごろである。当時すでに「富豪の徒」が亭館を設けはじめていたらしい。

街道をゆく〈9〉信州佐久平みち
司馬 遼太郎 (著)
朝日新聞社 (1979/02)
P300


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