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命の値段 [医療]

 日本の保健制度は素晴らしいものですが、このような高額な医薬品(住人注;オプジーボや分子標的薬グリベック))が開発されることまで視野に入れて設計されたわけではありません。今のままの制度で、どんどん高額な新薬が開発されれば、いずれどこかで破綻するに違いありません。いやな考え方ですが、命をお金に換算せざるをえない時代がやってきた、とも言えるのです。
 そういったことを考えるための質調整生存率(QALY クオーリー)という考え方があります。
これは、単なる生存期間の延長だけでなく、2年間延命できたとしても、生活の質が健康な人の半分なら1年と換算するというように、年数と生活の質(QOL クオリティ・オブ・ライフ)を掛け合わせたもので考えようというやり方です。そして、健康寿命1年のためにいくらかかるか、すなわち、一単位のQOLを獲得するための経費を増分費用効果費(ICER アイサー)といいます。
 健常人にくらべてQOLがどれくらいかを決めるのは難しいし、適正なICERというのもかなり難しいような気がします。
日本では議論されていませんが、アメリカやイギリスでは、およそ500~600万円が限界とされています。う~ん、健康な1年がこの値段というのは安すぎるような気がしますが、どうでしょう。
命の価値を判断して値段をつける、というよりは、これくらいに抑えないと社会がもたない金額、というような気がしますが、いずれ日本でも、遠からず真剣に考えなければならないようになるはずです。

こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)
P355


タグ:仲野徹
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