税抜き価格VS税込み総額 [社会]
ハーバード大学のチェティ教授らは、価格表示の方法が売り上げに与える影響を調べるために興味深い実験を行った2。
アメリカのスーパーマーケットでは、価格は「税抜き価格」だけが表示されていて、会計の際に、売上税が上乗せされた金額が表示されて、支払うことになる。
彼らは、北部カリフォルニアのあるスーパーで、一部の商品について「税抜き価格」だけの値札に「税抜き価格+売上税=税込み総額」という値札を付け加えた。
この結果、この値札をつけた商品は、八パーセントも売り上げが低下したという。この地域の売上税の税率は七・三五七パーセントだったので、消費者は単なる税額の表示方法の変更を価格上昇と感じて、税額分だけ商品購入を減らしてしまったのである。
この結果は、消費者が売り上げ税率を知らないからもたらされたのではない。彼らの調査によれば、ほとんどの消費者は売上税の税率を知っていたという。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P210
P217
もし、チェティ教授らの結果が正しければ、日本の家計消費は、二〇〇四年四月以降低下したはずである。この点については、内閣府が二〇〇四年に「地域の経済二〇〇四」で内閣府「景気ウォッチャー調査」を用いて簡単な分析を行っている5。
その結果は、「消費税総額表示方式の導入は特にスーパーに大きな影響を与えたが、その影響は二~三か月でほぼ収束した」と結論付けている。実際、月次の家計調査から対前年同月比の消費支出の変化率をプロットしてみても消費支出全体では影響は認められない(図Ⅲ‐1)。食料品支出は、四月のみ下落しているが、すぐにもとの水準に戻っている。
このようにしてみると、人々は短期的には税額表示の方法に影響されて消費行動を変える可能性があるが、すべての商品の表示方法が同じであれば、その影響は限定的である可能性が高い6。
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