SSブログ

簡単には変わらないものもある [社会]

 教育というのは非常に惰性の強い制度です。惰性が強いというのは、「昔からこうだったから、簡単には変えられない」という言葉が強い説得力を持つということです。
ところが教育に市場原理が侵入してきたころ頃から、「惰性的なものはすべてよろしくない」という話になってきた。政治家もビジネスマンも教育評論家もメディアも、口を揃えて「教育制度は惰性的で、なかなか制度を革新しようとしない。これではグローバル化する世界の変化についてゆけない。ただちに変化せよ」と言い立てたわけです。でも、僕はこの主張は間違っていると思う。
 たとえば学校の教師のメンタリティというのは、そんなに簡単に変わるものじゃない。医者でもそうですし、警察官もそうです。景況が変わったり、雇用環境が変わったり、産業構造が変わったりすると、それについてどんどん変わる職業的メンタリティーというものがあります。
でも、社会がどれほど変わっても、簡単には変わらないものもある。
医療や教育や司法にかかわる人間のメンタリティはそれほど簡単にはかわらないし、変わるべきでもないと僕は思います。そういう制度は政治体制が変わっても、市場動向が変わっても、それに影響されて変わるべきではない。

最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)
P243

 

 

DSC_4829 (Small).JPG英彦山


タグ:内田 樹
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント