仁 [倫理]
二九 子曰わく、仁遠からんや、我仁を欲すれば、斯( すなわ )ち仁至る。
~中略~
先生がいわれた。
「 仁は遠いところにあるのだろうか。いや、自分が仁を求めると、仁はすぐここにやってくるのだ 」
述而篇
論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
P204
P66
パターン化された行動や機械的な習癖―礼とは違う―は、まさしくわたしたちの生活を規定し、ほかの人を思いやる気持ちを妨げる。
けれども、行動パターンを打破する〈かのように〉の礼を繰り返す人生を通じて、まわりの人に親切にするすべを感じとる能力が身につく。重要なのはここだ。
この能力が〈仁〉、すなわち、人間の善性だ。
孔子の弟子たちは,〈仁〉について説明してほしいとたびたび孔子に求めた。孔子はそのつど、状況に応じてそれぞれの弟子に異なる返答をした。というのも、孔子のいう仁は抽象的に定義できるものではないからだ。
仁は、他者に対してふさわしい反応ができる感性といえる。こまやかな感覚を磨くことで、まわりの人のためになるよう行動し、その人たちのよい面も引き出せる。
わたしたちの言動の一つひとつは、仁を実践するか、仁を損なうかのどちらかだ。
P68
孔子は仁を定義しようとしなかった。仁を実践するとはどういうことかを理解するには、つぎつぎに変化する異なる状況のなかで仁を感じなければならないことを弟子に教えたかったからだ。わたしたちはだれでも仁を感じているし、仁を見分けられるようになれば、仁をはぐくむことができる。
ハーバードの人生が変わる東洋哲学──悩めるエリートを熱狂させた超人気講義
マイケル・ピュエット (著), クリスティーン・グロス=ロー (著), 熊谷淳子 (翻訳)
早川書房 (2016/4/22)
コメント 0