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心房細動の治療法 [医学]

 心房細動の治療法は大きく2つに分けることができます。
 1つは、心房細動自体を予防する、あるいはいったん心房細動になったものを正常の脈(洞調律)に戻すものです。~中略~ 心臓が奏でるリズムを正常に戻す、すなわちコントロールするということから、これを「リズムコントロール」と呼びます。
~中略~
 心房細動で生命予後を悪くし、QOLを低下させるのは、合併症、特に脳梗塞と心不全でした。そこで、2つめの治療法は、正常の脈に戻すことが困難ならば、心房細動であることは受け入れましょう、その代り合併症はしっかり予防して、生命予後とQOLは改善するぞという、次善の策を選択しようというものです。~中略~ 心不全の予防の中心は、心房細動による速い脈を減らすことです。心拍数のことを英語で「ハートレート(heart rate)」というので、この合併症を予防する治療法を「レートコントロール」といいます。
 心房細動と断固戦う治療法→リズムコントロール
 心房細動と共存する治療法→レートコントロール

心房細動のすべて ――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章
古川 哲史 (著)
新潮社 (2018/12/14)
P86

DSC_5068 (Small).JPG和布刈神社

P88
  リズムコントロール、すなわち心房細動を正常の調律(洞調律)に戻す(必ずしも成功するとは言えないので「洞調律に戻そうとする方法」といったほうが正確かもしれません)には少なくとも次の方法があります。
 ✓電気ショック(電気的除細動)
 ✓薬物による方法(薬理学的除細動)
 ✓カテーテルアブレーション

P91
 心房細動の電気ショックを行うとき、お医者さんが気をつけていることが2つあります。1つは患者さんに与える精神的ストレスをできるだけ小さくすることです。
AEDは心室細動を除細動する装置です。人は心室細動になると意識を失います。したがって、AEDで電気ショックを与えるときには、特に麻酔などをかける必要はありません。
一方、心房細動では普通は意識はしっかりしているので、これで電気ショックを与えると精神的に大きなストレスを与えてしまいます。ストレスは心房細動を引き起こす要因の1つでもあるので、これでは止まるものも止まらなくなってしまいます。そこで、患者さんには静脈注射によって10分くらい眠っていただき、精神的・肉体的ストレスのない状態で電気ショックを与えます。目が覚めた時は心房細動は止まっているという塩梅です。
 お医者さんが気にかけている2つめのことは、脳梗塞です。脳梗塞の起こり方の説明で、血栓ができるのは血流が低下した時と説明しましたが、これがはがれて脳に飛んでいく原因はほとんど説明しませんでした。その1つとして、物理的な刺激が血栓をはがすといわれています。そこで、すでに左房内に血栓がある心房細動の患者さんに物理的刺激の電気ショックを与えると、血栓がはがれて飛んで脳梗塞を起こすことがあるのです。
心房細動で電気ショックを与えるときは、前後3週間くらい血液をサラサラにする薬(「抗凝固薬」→第8章)を投与します。できたら、経食道エコーを行なって左心房内にに血栓がないことを確認してから行なうことが望ましいとされています。このため、心房細動で電気ショックを与えるときは1~2日の入院が必要となります。
~中略~
 実は電気ショックは一時的な治療であって、長続きする治療ではありません。もともと心房細動が起こりやすい状態の心臓なので、電気ショックで正常の脈に戻ってもほぼ全例で遅かれ早かれ心房細動が再発します。

P109
「リズムコントロールとレートコントロールで生命予後に差がなかった」という結果が伝えるメッセージは、
 「リズムコントロールが成功して正常の脈にもどると死亡率は確かに下がります。しかし、リズムコントロールでは心房細動が起らなくなる人が少ないので、全体としてみるとリズムコントロールとレートコントロールに差がありません」
ということです。


タグ:古川 哲史
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