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血液をサラサラにする薬 [医学]

 血液が固まることを「凝固」、血液が固まってできたものを「血栓」、これがはがれて血流にのって流れて行って到着先の血管に詰まったものを「塞栓」といいます。
~中略~
 血液をサラサラにする薬は、この血液の凝固を抑制して血栓ができるのを防ぐ薬です。  血栓と一括りに呼びますが、血栓には動脈の中にできるものと静脈の中にできるものがあります。これらは性質が違うので、予防する薬も違うものが使われます。
 動脈にできる血栓を予防する薬は、「抗血小板薬」と呼ばれるものが使われます。皆さんが耳にしたことがあるとすると、アスピリン(商品名アスピリン、バファリン)でしょう。これは、心筋梗塞やアテローム血栓性脳梗塞など動脈に血栓が詰まることによっておこる病気の予防に使われます。
 一方、静脈にできる血栓を予防する薬としては、「抗凝固薬」と呼ばれる薬が使われます。皆さんが聞いたことがあるとしたら、ワルファリン(商品名ワーファリンなど)ではないでしょうか?これは、下枝静脈の血栓が肺に飛んで行って起こる肺塞栓、俗に「エコノミー症候群」などと呼ばれる病気の治療にも使われます。
~中略~
したがって心房細動に合併する血栓の予防には血流の遅いところにできる血栓を予防する後者の抗凝固薬(ワルファリン等)が使われます。

心房細動のすべて ――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章
古川 哲史 (著)
新潮社 (2018/12/14)
P131

心房細動のすべて―脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章―(新潮新書)

心房細動のすべて―脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章―(新潮新書)

  • 作者: 古川哲史
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/12/21
  • メディア: Kindle版

DSC_5080 (Small).JPG甲宗八幡神社

P147
ワルファリンは正しく使っていても生活環境の変化によって変動が激しいので、効果不足になって脳梗塞が起きたり、逆に高価が強くなりすぎて副作用の出血が起きることがあります。
 そこで、多くの製薬会社が化学合成によってワルファリンの欠点をもたない新しい抗凝固薬の開発に着手しました。
2011年のダビガトラン(商品名プラザキサ)を皮切りに、リバーロキサバン(商品名イグザレルト)、アピキサバン(商品名エリキュース)、エドキサバン(商品名リクシアナ)の4種類が次々に発売されました。これらを総称して直接経口抗凝固薬(長ったらしいので、略してDOAC[ドアックと発音します])と呼びます。
「直接」という言葉がついているのは、ワルファリンのようにビタミンKに作用することで、間接的に凝固因子の働きを抑えるような回りくどい作用でなくて、凝固因子の働きを直接的に抑えるからです。

P154
 DOACの作用時間が短く飲み忘れが許されないこと、一方でワルファリンでは有効量と中毒量の隔たりが狭くて、容易に顆状あるいは不足になることは、高齢の患者さんの場合は心配の種です。というのは、最近一人暮らしのご老人が増えており、また心房細動では認知症の発生率が高いので、薬を飲み忘れること、あるいは飲んだかどうかわからなくなって間違って2日分飲んでしまうことが、しばしば起こるからです。このような薬の服用が難しそうな患者さんに、ワルファリンあるいはDOACを処方してよいものかどうかは、医者としていつも頭を悩ませる問題です。

P155
 抗凝固薬は、出血が起きた場合、血液を固まりにくくする薬であって、出血を起こしやすくする薬ではありません。なので、もともと出血が起こりやすい素地があるところに出血が起こります。
例えば、歯槽膿漏があると、歯を磨く際に血が出ることがあります。また、痔があると便に血が混じることがあります(下血)。このような出血は小出血と呼んでいます。小出血は抗凝固薬によってひどくなることがあるのですが、よっぽどひどくならない限り抗凝固薬の内服は続けてもらうことが普通です。なぜなら、やめることによって起こる脳梗塞の方が問題が大きいからです。

P161
 ワルファリンあるいはDOACで抗凝固療法を行っている人で、しばしば問題となるのが、抜歯や胃カメラなどの内視鏡検査をするとき、これらの検査を受けるときには1週間前からワルファリンを中止しましょう、とされていました。~中略~
 抜歯や胃カメラなどでワルファリンを中止した人で、脳梗塞の発症率を調べた研究が発表されました。それによると、わずか2週間の間になんと1%もの人が脳梗塞を発症することが分かりました。
 もし歯医者さんにかかって、「抜歯が必要ですが、1%の確率で脳梗塞になりますけどいいですか?」と言われてワルファリンをやめて抜歯する人がどのくらいいるでしょうか?なんか胃がもたれるなと思って病院にかかったら、「胃カメラをしましょうか。でも2週間のあいだに1%の確率で脳梗塞になりますけどいいですか?」と言われて、「はい、問題ないです。胃カメラしてください」という人はどのくらいいるでしょうか?
 そのような理由から、今では抜歯はワルファリンやDOACを服用したまま行います。


タグ:古川 哲史
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