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代替医療を疑え [医療]

P184
ひとことでいうと、これまでの治療成績のデータに基づいておこなわれている医療が標準医療で、それ以外のものが代替医療です。
「がんにおける代替医療とその生存に対する影響」と題された論文が、エール大学の研究チームから発表されました。(JNCI,2018)。
JNCIというのは、米国国立がん研究所によるがん研究分野での一流雑誌です。けっこう大きく報道されたその内容は、代替医療だけを受けた人の死亡リスクは、標準医療を受けた人の2.5倍というものでありました。
~中略~
 ただし、少し注意が必要なのは、その論文は、代替医療だけを受けた人についてのデータとの比較である、というところです。
標準医療に代替医療を組み合わせたものは「統合医療」、それから標準医療に組み合わせて使う代替医療は「補完医療:と呼ばれます。こういったケースと、代替医療の単独治療のケースは区別して考える必要があることはいうまでもありません。
ひっくるめて考えると、少なくとも代替医療だけに頼るのはやめといたほうがよろしい、ということになります。

P186
 標準医療と代替医療の違いは、医学的な裏付けがあるかどうか、すなわち、治療についてのエビデンスがあるかないか、です。研究が進んで、代替医療とされていたものが標準治療に格上げされることは、当然ありえます。
なので、すべての代替医療が絶対に効かない、と断定するのはきわめて困難です。しかし、がんのように放置すると死に至る可能性が高い病気において、エビデンスのない治療法に身をゆだねるのは、あまりに危険すぎるとは思われませんか?
ほかに治療法がないと診断されたので代替医療を、という人もおられるかもしれません。その心情が理解できない訳ではありません。しかし、ほとんどの医師は、たとえ自分がそのような状況になったとしても、代替医療に大枚をはたいたりしないでしょう。

P187
その本(住人注;アルトゥール・ガワンデというハーバード大学教授の「死すべき定め―死にゆく人に何ができるか」(みすず書房))では、末期のがん患者の場合、緩和ケアをしっかりうけるようにした方が、抗がん剤などの治療を中止するタイミングもホスピスに入るタイミングも早くなった、そして、臨終の苦痛が少なかった、という研究が紹介されています。
でも、そんなことをしたら寿命が短くなってしまったのではないかと思われるかもしれません。わたしもそんな気がします。しかし、実際は逆で、平均25%も長生きしたというのです。
末期がんで代替医療に身をゆだねるよりも、心の平穏が得られるし、この方がはるかにいいと思うのですが、いかがでしょう。

(あまり)病気をしない暮らし
仲野徹 (著)
晶文社 (2018/12/6)

DSC_6213 (Small).JPG金峯山寺


タグ:仲野徹
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