新奇探索性をコントロールしろ [雑学]
人間には、ほかの霊長類たちと比べると、新しい環境のほうを選好する「新奇探索性」を強く持っている人たちがいます。このために、なまやさしい環境には満足できず、あえて厳しい環境へ、ドーパミンの刺激を求めて飛び込んで行かずにはいられない、というのです。
そういう意味では、人間というのは何とも業の深い生物だとも言えます。
~中略~
この「新奇探索性」は。「合理性」としばしば衝突する人間の「弱み」のひとつです。
「わかっちゃいるけどやめられない」という昔の流行語が、わかりやすいフレーズでしょうか。やめられない何かの楽しみであることもあり、人が道ならぬ恋に走る元凶であり、いわゆる「背徳的」な行動を増長する仕組みです。これを人間が自力でコントロールするのはきわめて難しいことです。
仏教の言い回しを借りれば、コントロールしきろうとする行為は「灰身滅智(けしんめっち)」と言います。欲望の種を滅することは自らの身を灰にまで焼き滅するようなものだというのです。
東洋思想の見方の一面からは、これがまさに自殺行為と言ってもよいものととらえられているのは面白いことです(実際、生殖を止める行為でもあるから、生物種としてはゆるやかに滅亡の道をたどることになります)。
重要な機能でありながらバグのようでもあるこの「弱み」を、外部から適度なゆるやかさでコントロールすべく当てたバッチ(プログラムを修正するデータ)が、社会道徳であったり、宗教的倫理であったりします。
そう考えると、人間をめぐるさまざまな現象のつじつまが合います。
空気を読む脳
中野 信子 (著)
講談社 (2020/2/20)
P194
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