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コネ [雑学]

  私たちのこの社会では、縁故関係は必要だ。慎重に関係を構築し、それをうまく維持できれば、そこに関与する者の成功はまちがいない。

 コネといっても、二通りある。君にはその違いを常に念頭において行動してもらいたい。
 まずは、対等な縁故関係だ。これは、素質も力量もほぼ似通った二者が構築する、互恵的な関係で、割合自由な交流、情報交換が行われる。
~中略~
 もうひとつは、対等でないコネだ。地位や財産が片方にあり、もう一方には素質や能力があるという場合がそれだ。
この関係では、恩恵にあずかれるのは片方だけで、その恩恵も、表面に出ないように巧みに覆われていることが多い。
 恩恵にあずかる側は、相手のご機嫌をうかがい、気に入られるように振舞い、相手の優越感をじっと耐え忍んでいる。

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P260

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫

 

-d8410.jpg法厳寺 舟廊下
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気のせい食品 [雑学]

コラーゲンたっぷりの高価なふかひれを食べた翌朝、お肌がプリプリになったと感じる者は幸いである。
薬効成分を全く含まないが薬剤の形状をした偽薬(プラセボ)を投与されても、それが偽薬だと知らされない限り薬効が現れてしまうおめでたい人々というのが、どんな実験を行なっても必ず少なくない数、現れる。多いときには三割、四割も。これをプラセボ効果という。

それほどまでに人間の身体は信じやすい。そして、プラセボ効果もまた立派な効果である。
売る人買う人それぞれ納得がもたらされるのであれば何の問題もない。福岡ハカセとて、そういうところに駆け寄ってまで諫言するほどの検非違使根性を持ち合わせておりません。
 おしなべて機能性食品と呼ばれるもののほとんどは「気のせい食品」であると私は思う。

福岡 伸一 (著)
ルリボシカミキリの青
文藝春秋 (2010/4/23)
P119

ルリボシカミキリの青

ルリボシカミキリの青

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/04/23
  • メディア: 単行本

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NLP [雑学]

 NLPはNeuro-Linguistic Programingの頭文字をとったもので、「神経言語プログラミング」と訳されます。
 Neuroは「神経」。五感のことです。人は、視覚・聴覚・身体感覚・嗅覚・味覚といった五感を通して出来事を体験します。
 Linguisticは「言語」。人は、五感を通して得られた情報を言語によって思考し、意味づけし、コミュニケーションします。
Programmingは「プログラミング」。思考や行動のパターンです。人間の脳は、コンピュータと似ているところがあり、プログラミングされたとおりに動きます。望む結果を得られるよう、プログラミングを変えることができます。
 NLPは、神経、言語、プログラミングの相互作用を解き明かすものです。

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書
前田 忠志 (著)
実務教育出版 (2012/3/23)
P20

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

  • 作者: 前田 忠志
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2012/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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趣味 [雑学]

芝居の好きなものは芝居を観、角力(すもう)の好きな者は角力を観、盆栽いじり好きなものは盆栽をいじるが好いのである。
趣味は気を涵養して生気を与え、かつ順当に発動せしむるにおいて大有力なものである。

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P193

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/01/01
  • メディア: Kindle版

 

DSC_6365 (Small).JPGみょうが


タグ:幸田 露伴
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死ぬ確率 [雑学]


豊かな国々における年間死亡率というのはだいたい100人に1人くらいである(0.8%).1年間は約10000時間なので,生存する100万時間(=100人×100000時間)あたり1人死ぬことになる.つまり,ある人が豊かな国に暮らしていれば,死ぬ確率は平均すると1時間あたり100万分の1ということになる.
事実上,これが生きていることのリスクということになる.もちろん,リスクはかなり多様であり,年齢,性別,社会経済的状況その他の要因で変わってくる.赤ちゃんが1歳になるまでと,55~64歳の間はだいたいこの平均に当てはまり,来年死亡する可能性はおおよそ100分の1となる.
(出典:V.Smil,"Global Catastrophes and Trends",:the next 50 years,MIT Press(2008),P226)

リスク 不確実性の中での意思決定
Baruch Fischhoff (著), John Kadvany (著),中谷内 一也 (翻訳)
丸善出版 (2015/4/26)
P63






 

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2015/04/26
  • メディア: 新書


DSC_2218 (Small).JPG風のガーデン


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サイカ党 [雑学]

 戦国時代に、サイカ党という奇妙な武士集団があった。
 紀州雑賀(さいか)という。いまの和歌山市の南につながって、山地がいきなり海に没するミサキのあたりにむらがって住み、全員鉄砲に習熟していた。
~中略~
 日本の鉄砲の歴史は、たれでも知っているとおり、天文十二年(一五四三年)種子島に漂着したポルトガル船の船長が島の王様種子島時堯に一梃千両で二梃売りつけたところところからはじまる。
 それからわずか十二年後の天文二十四年の厳島合戦に、はやくもこの新兵器が戦場にあらわれ、六、七梃で敵をなやましたとある。
~中略~
 さて、話はもどって、サイカ党のことである。
 かれらは、もともと郷士団で、田畑のすくない土地だから、浦へ出て魚をとったり、山でイノシシを追ったりして、妻子をたべさせていた連中だった。
 この大田舎に早く鉄砲が伝わったのには、わけがある。種子島時堯の館でごろごろしていた旅の僧があり、鉄砲をみて、
「手前に一挺くだされませぬか」
 時堯はなにげなくあたえた。むしろ日本史を動かしたのは、長篠ノ戦いよりも、この瞬間だったかもしれない。
 僧は、紀州根来寺の男だった。根来の僧兵はこのために早くから火力装備をもったが、紀州雑賀は根来に近い。地理的に近いところから、雑賀衆が鉄砲に習熟することで、天下にさきがけた。土地では食えないのだ。
 自然、かれらは、技術傭兵になった。諸国に合戦があると、かれらは集団的に傭(やと)われて、大いに戦場で活躍した。きのうはA国にやとわれ、きょうはB国にやとわれるということもあったはずだ。
 いっさい仕官はせず、技術を売ってのみ生活していたという武士集団は、戦国社会では、鉄砲のサイカ党と忍術の伊賀者のほかにない。専属でなくフリーの戦闘タレントだったというわけである。
 戦国期を通じて、かれらはあくまでもフリーの職業精神に徹してきたのだが、最後になってそれが崩れた。ゼニカネでくずれたのではない。
 信仰でくずれたのだ。
 当時の新興宗教一向宗(真宗、いまの本願寺の宗旨)に集団入信してしまったのである。
 信長が摂津の石山本願寺を攻めたとき難攻不落だったのは、よくいわれるように城兵の信仰の固さだけではない。
 当時、最新鋭の火力装備をもつ織田軍でさえ、石山本願寺にこもるサイカ党の火力のまえには、手も足も出なかったのである。
(昭和36年11月)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10

司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P69


司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫



伊勢神宮 外宮 (32) (Small).JPG伊勢神宮 外宮


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毒味 [雑学]

かつて大奥にいた者数十人から往時のさまを聞き取った「定本 江戸城大奥」とおいう本がある。これに毒見の様子がでてくる。将軍夫人の食事は「御広敷番頭及び中年寄の御毒味」をへて提供されていたとあり、江戸城では毒殺を避けるため将軍婦人用の御膳は一〇人前も調理させていたという。
一〇人前御膳を用意すれば、毒殺者は一〇人前全部に毒を盛らなければならず、毒殺が難しくなる。そんな工夫をしていた。
一〇人前のうち二膳が毒味に回され、残った八膳のうち三つだけが将軍夫人の前に出され。将軍夫人はその三つのうち二つの御膳にランダムに箸(はし)をつけていた。
残りはお付の登板の者が食べていたというから、この方式のおかげでお付きの者も、美味しい者にありついていらわけである。
~中略~
細川家の毒味役は毒味をさせる係であって毒味をする係ではなかった。毒味をするのは調理した者と御膳を運ぶ者であったのだ。

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)
P128

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 新書

DSC_5013 (Small).JPG平尾台


タグ:磯田 道史
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なぜ皮膚はかゆくなるのか [雑学]

 アレルギーで最初に起きる反応は、「マスト細胞の脱顆粒」である。~中略~
 たとえば花粉のアレルギーのある人が、花粉に接触すると全身のどこにでも存在するマスト細胞に花粉の分子がくっつき、それに誘発されてマスト細胞中の顆粒が放出され、中にあったヒスタミンが組織中にばらまかれる。するとかゆくなる。これが「かゆみ」の始まりである。



なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池 新(著)
PHP研究所 (2014/10/16)
P49



なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

  • 作者: 菊池 新
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 新書



 



平城宮跡 (4).JPG平城宮跡

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タグ:菊池 新
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藩都と県名 [雑学]

 明治政府がこんにちの都道府県をつくるとき、どの土地が官軍に属し、どの土地が佐幕もしくは日和見であったかということを後世にわかるように烙印を押した。
 その藩都(県庁所在地)の名称がそのまま県名になっている県が、官軍側である。
 薩摩藩―鹿児島市が鹿児島県。
 長州藩―山口市が山口県
 土佐藩―高知市が高知県
 肥前佐賀藩―佐賀市が佐賀県。
 の四県がその代表的なものである。
 戊辰戦争の段階であわただしく官軍について大藩の所在地もこれに準じている。
 筑前福岡藩が、福岡城下の名をとって福岡県になり、芸州広島藩、備前岡山藩、越前福井藩、秋田藩の場合もおなじである。

 これに対し、加賀百万石は日和見藩だったために金沢が城下であるのに金沢県とはならず、石川という県内の小さな地名をさがし出してこれを県名とした。
~中略~
 官軍の主力はいわゆる薩長土肥だが、その肥の肥前佐賀藩などはあれほどの小地域で立派に一県なのである。
本来いまの長崎県内に入るはずだったのが、肥前出身の高官たちが、「わが藩の版図を県として残すべきだ」として佐賀藩ができた。
 権力のおかしさのひとつは、それがひどく感情的であるということである。
 ―南部藩は賊軍であった。
という好悪の感情でもって、小南部八戸の地をうむをいわせず青森県へほうりこんでしまったのである。

街道をゆく (3)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P90

街道をゆく〈3〉 (1973年)

街道をゆく〈3〉 (1973年)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2024/02/06
  • メディア: -

 

 DSC_0042 (Small).JPG

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 [雑学]

松の翠(みどり)は大和絵や桃山の障壁画の画題だっただけでなく、「古今」「新古今」で定着した日本の名勝には、かならずといっていいほど松がある。日本三景といわれる天ノ橋立、松島、厳島も、松がなければ成立しない。
 私は戦時中、中国の東北地方にいたが、敗戦の前に朝鮮半島を南下して釜山まできたとき、いままでの大陸風の淡いみどりが、この半島の南端の海岸町で急に濃くなったことに驚いた。
気づいてみると、釜山の西郊に赤松の林があり、この色彩が、溜め息が出るほどに佳かった。
佳いというのは美的な意味でなく、理屈もなにもなしに、松でおおわれた故郷がもう一衣帯水のむこうに横たわっている、という感動だった。
室町期の倭寇どもも、東シナ海をもどってきて、はるか沖合に根拠地の松浦半島の松がほのかに見えはじめたとき、おそらくこういう感動をもったのではないか。
われわれの故郷についてのイメージの底には、かならず松が作る景色があるように思える。

街道をゆく (7)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1979/01)
P174

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -

DSC_0103m (Small).JPG

天ノ橋立

 

 

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前田利家 [雑学]

戦国末期、北陸路が織田勢力のものになったとき、信長は柴田勝家を北ノ庄城(福井市)に置き、北陸道の触頭(ふれがしら)とした。
 いまの武生の武生市役所のあたりにあったらしい府中の城主には前田利家が命ぜられた。命令系統としては柴田勝家の指図をうけることになる。
 柴田勝家が賤ヶ岳で秀吉と決戦したとき、利家は系列上やむなく勝家に属して出陣したが、古くからの友人である秀吉と戦う気がせず、決戦に参加せずに府中にひきあげたということになっている。
 前田利家というひとはよほど人柄のいい人物だったらしく、そういう行動をとっていながら勝家に恨まれなかった。
勝家が賤ヶ岳で敗北して北ノ庄へ退却すべく北行する途中、この府中城に立ち寄って、湯漬けを乞ういているのである。
利家はそれをこの敗将のためにふるまった。敗将はさらに塩引の鮭を所望した。
利家はそれをふるまい、二人はよほど長時間昔ばなしをした。勝家が去ったあと、ほどなく追跡中の秀吉がこの府中城に立ち寄って、やはり湯漬を利家に所望している。

街道をゆく (4)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P256

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

街道をゆく〈4〉洛北諸道ほか (1978年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -

 

平等院 (21).JPG平等院

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地震は政治も動かす [雑学]


 地震は大地だけでなく政治も動かす。教科書にはない真実を書いておく。豊臣政権の崩壊は、実は伏見地震が引き金になっている。自身のせいだけではないが、地震後のかじ取りのまずさで豊臣家は滅亡した。
 地震時、豊臣政権下の大名たちは朝鮮出兵で疲れ、困窮して、不満をつのらせていた。このままでは甥のかんぱく秀次に政治の求心力が移る。秀吉と三成はそれを警戒した。
先手を打って、秀次とその妻子側近をまるごと処刑。それで家族を殺された大名が続出。多くの大名たちが朝鮮出兵の不満とあいまって、秀吉・三成に怨みの目を向けた。
 そこへ伏見地震がきた。ところが、秀吉は地震で崩れた自分の居城=伏見城をもっと豪華に再建せよ、同時に朝鮮に再度攻め込めと命じた。
 豊臣から徳川へ心が移りはじめたきっかけは地震であった。


天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P31



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



 



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タグ:磯田 道史
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 [雑学]

 十六世紀の末に、オランダ人が、快適な飲料が東洋のある灌木の葉から作られるという情報をもたらした。
 ~中略~ この一六一〇年という年に、オランダ東インド会社の船がヨーロッパに最初に茶をもたらした。それは一六三六年にフランスで知られるようになり、一六三八年にはロシアに達した。
英国は一六五〇年にこれを歓迎して、「かの素晴らしき、かつあらゆる医師の推奨せる中国飲料、中国人はチャと呼び、他国人はテイまたはテーと呼ぶ」と語った。
 この世のあらゆる良いものと同様に、茶の宣伝も反対にでくわした。~中略~ 当初は茶は高価(一ポンドにつき約一五、六シリング)のため一般の消費するところとならず、「饗応と歓待の王室御用品、王侯貴族むけの贈物」であった。こういう欠点にもかかわらず、喫茶は驚くほど急速にひろまった。
十八世紀の前半になると、ロンドンのコーヒー店は事実上喫茶店となり、アディソンやスティールのような文士、通人の溜まり場になり、彼らは茶を飲んで退屈をまぎらわした。

この飲料はやがて生活必需品―課税対象となった。これに関連して茶が近代の歴史に演じた重要な役割が思いだされる。植民地アメリカは本国の圧迫に言いなり放題になっていたが、茶に重税が課されるや、ついに人間としての忍耐の限度に達した。アメリカの独立はボストン湾に茶箱を投げ捨てた日にはじまる。

茶の本
岡倉 天心 (著),桶谷 秀昭 (翻訳)
講談社 (1994/8/10)
P20


英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/08/10
  • メディア: 文庫

 



DSC_2085 (Small).JPG上野ファーム

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タグ:岡倉 天心
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まぜずし [雑学]

寒いうちは脂肪の濃いものや甘みの強いものがおいしいが、こう暖かくなってくると眼に爽やかなものや、酸っぱいものがほしくなる。 少なくも私には、あれをつくるときにも、たべるときにも、若さとか楽しさとか遊びとかいうところへ思いがつながる。
(一九五九年 五十四歳)

幸田文 台所帖
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P110

藤松小学校運動会 (3) (Small).JPG藤松小学校運動会

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タグ:幸田 文
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金毘羅大権現 [雑学]

 金毘羅大権現というのはインドのガンジス川のワニの化身だといわれているが、仏教渡来後、どういうわけか、仏教と直接縁のないインドの古俗の神が、何かにくっついて日本に入ってきたものと思える。
仏教渡来後、日本人は、在来の神々よりも「異国の神、きらきらし」ということで、効き目は海を渡ってきた蕃神にあるとした。そういく古来以来の気分が、あやうく遭難しかける場合に、住吉の神に祈らず、金毘羅大権現を祈るというあたりに続いているともいえるかもしれない。

街道をゆく (7)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1979/01)
P154

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -

DSC_3021 (Small).JPG宗像 大島


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戦国時代の僧の役割 [雑学]

  「心頭滅却すれば火もまた涼し」というように、禅は気合いの仏法である。 (住人注;戦国大名は)子ども時代に禅寺で修行し、気持ちを高める漢詩や漢文を学ぶことは、戦でもっとも重要な決断力を養うのに大いに役立ったのである。  それに領内の治世や外交にも、禅僧をはじめとする僧の力が必要だった。 僧は文書の作成に長けていただけでなく、その師弟関係を軸とする人脈は大名の領国を越えて広がっていた。そのため、さまざまな交渉を僧が引き受けた。  豊臣秀吉の毛利攻めのときも、毛利方の交渉役は安国寺恵瓊(あんこくじえけい)という臨済僧で、のちに秀吉によって僧のまま大名に取り立てられた。  そのほか、徳川家康が幕府を開いたときも、臨済僧の金地院崇伝(こんちいんすうでん)、天台僧の天海(てんかい)の二人が黒衣(こくえ)の宰相、すなわち僧服を着た政治顧問として幕府の体制をつくりあげたのだった。 ~中略~

仏像探訪 (エイムック 2124)

エイ出版社 (2011/2/17)
P13

仏像探訪 (エイムック 2124)

仏像探訪 (エイムック 2124)

  • 出版社/メーカー: エイ出版社
  • 発売日: 2011/02/17
  • メディア: 大型本

 

DSC_6359 (Small).JPG

大迫石仏

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タグ:大角 修
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幕府という政体 [雑学]

「水師提督(クーパーのこと)の申されることはよくわかった。しかしわが藩がおこなった攘夷(住人注;下関戦争 )はわが藩の意志でおこなったものではない。朝廷と幕府の命令でおこなったのだ。 わが藩は単に鉄砲に過ぎない。射手は幕府である。その三百万ドルは、幕府が支払うべきものである。
 晋作がいうことに一理あることは、日本政府の政情にあかるいサトーにはわかっている。
~中略~

 しかも、(住人注;サトーが晋作を評して)魔王らは用意のいいことに、朝廷と幕府の攘夷命令書をちゃんともってきていて副使の渡辺という者がそれを卓上に置いた。

「よかろう、償金の件は幕府に交渉する」
 と、クーパーがあっさりいったのは、幕府なら取はぐれがないとみたのである。
幕府はこれをいやとは言えないということは、英国人たちはよく知っていた。この日本国の政府というのは奇妙な体制で、じつは徳川家という「家」なのである。 徳川将軍は中国やヨーロッパのような皇帝ではないということは、サトーの洞察によって英国だけはそう解釈をしていた(これとは逆にフランスはあくまでも徳川将軍をその崩壊まで皇帝と見ており、この政体解釈の差が、対日外交における英国の勝利―フランスに対して―をもたらした。
~中略~
「それは長州藩がやったことで、幕府にはなんの責任もない」 といってしまえば、長州藩は独立国家であることになり、またその解釈をひろげれば三百諸侯はみな独立国家であるということになって、幕府は日本唯一の正式政権であるという大きな建前がくずれてしまう。

世に棲む日日〈3〉
司馬 遼太郎 (著)
文藝春秋; 新装版 (2003/04)
P217

世に棲む日日(三) (文春文庫)

世に棲む日日(三) (文春文庫)

  • 作者: 司馬遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/12/12
  • メディア: Kindle版

 

唐戸 (8) (Small).JPG唐戸市場
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茶道 [雑学]


茶道は貴婦人の居間に浸透したし、身分いやしい者の栖(すみか)にも入った。われわれの田夫は花を活(い)けることを知り、野人も山水を尚(たつと)ぶことを知るようになった。
人がその人生の劇に起る厳粛にして滑稽な関心事に無感動であるならば、われわれはそういう男を、俗に「茶気がない」と言う。逆に、浮世の悲劇に無頓着に自由奔放にはしゃぎまわる抑制のない審美家には、「茶気がありすぎる」という烙印を押す。

茶の本
岡倉 天心 (著),桶谷 秀昭 (翻訳)
講談社 (1994/8/10)
P14


英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/08/10
  • メディア: 文庫

 







DSC_2075 (Small).JPG上野ファーム

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タグ:岡倉 天心
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淡路 [雑学]

 淡路というのはむろん、日本の他の地域と同様、弥生式農耕が入って、銅鐸などもかなり出ている。その後古墳時代に入ってからは、漁民こそこの国の代表のように「日本書紀」などに登場する。しかし、広大な耕地をもつ古代土豪がいたのかどうか、この島における前記古墳や中期古墳の存在がまだあきあらかでないため、よくわからない。
 そのくせ、この島は伊弉諾(いざなぎ)・伊弉冉(いざなみ)神話で知られるように、古代国家の誕生神話のなかでも主流をなす伝承をもっている。この男女紳はまずははじめにおのころ島を生んだ。
おのころ島は、神話だからそれがどこということもないが、淡路島の属島である沼(ぬ)島であるといわれたり、淡路島そのものだともいわれたりする。
この神話は元来、ふるくから淡路島にあったものを畿内政権がとり入れたものかとも思える。
そのことはどうでもいいが、この両神の国生み神話が天皇家の神話の最も重要な話の筋に組み入れられているということは、淡路には大阪湾沿岸の権力(大和をふくめて)が古くから及んでいて、古墳時代がはじまっても、この島に大土豪を成立させなかったのかもしれない。古代天皇家そのものが、淡路を直轄領とする大豪族だったのである。
 また淡路島は、さきの「日本書紀」の「応神紀」にもあるように、「海人部(あまべ)」とともに「山守部(やまもりべ)」も置かれた。山守部は山林に入ってしごとをする人である。猟もする。これも王朝直属の民である。山守部には木材だけでなくシカやイノシシも獲って送り出す義務があったのであろう。淡路島の古代は、海彦も山彦も、そして農耕者も、古代王朝を食べさせてやってきたことになる。
この島が、神話で優遇されたり、また島ひとつで一国という礼遇をうけたことも、多少はこういう有難味から出たものではなかったか。

街道をゆく (7)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1979/01)
P125

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

街道をゆく〈7〉大和・壷坂みちほか (1979年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -

 

DSC_3028 (Small).JPG宗像 大島

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眠れなくても大丈夫 [雑学]

   2000年、ハーバード大学のスティックゴールド博士が、多数の被験者を相手に「断眠実験」を行ったところ、記憶力の上達のためには最低六時間の睡眠時間が必要であることが判明した。
さらに彼は、睡眠が持つ独特のリズムの関係から七・五時間眠った場合がもっとも効果が著しかったとメディアに報告している。
~中略~
睡眠による「記憶補強効果」である。
 ところが驚くことに、目を閉じてリラックスしていただけでも、睡眠と同じ効果が得られた。
~中略~
 これは不眠症の人や、重要な仕事を前日に控え緊張してなかなか寝付けない人にも朗報であろう。眠れなくともべっどで横になるだけで、脳にとっては睡眠と同じ効果があるのだから。
そう、眠れないことをストレスに感じる必要はないのだ。

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二 (著)
祥伝社 (2006/09)
P190  

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

  • 作者: 裕二, 池谷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫

 

DSC_6336 (Small).JPG普光寺磨崖仏

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「かゆい」には心がからむ [雑学]

 一般の方に「かゆみに抗うつ剤などの、向精神薬が効く」と話すと大抵驚かれる。
~中略~
 それにしても、抗うつ剤の外用が効果的とは、興味深い話ではないだろうか。
 向精神薬が効く理由についてはまだまだわかっていない点も多いが、「かゆみ」は単に皮膚炎など体表の病気から発生するだけでなく、そこに「心」が大きく関わってくる感覚だということがこのような事実からも推測される。


なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池 新(著)
PHP研究所 (2014/10/16)
P38


なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書)

  • 作者: 菊池 新
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 新書

 




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アドラー心理学 [雑学]

 非行にせよ、不登校にせよ、リストカットにせよ、あらゆる問題行動とは「安直な優越性の追求」である、とアドラーは言います。

 本来、他者から注目を集めたり、他者から認めてもらうには、それなりの努力が必要です。
ところが勇気をくじかれた子どもたちは、その努力を抜きにして自分を認めてもらおうとします。
その安直な行動こそが、問題行動なのです。
岸見一郎

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2010/7/23)
P214

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

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孌童(れんどう) [雑学]

 ホモは、歴史的にみて、どうも、少年愛から出発したらしい。オトナが少年を愛する。中国のふるいことばに、
 「孌童(れんどう)」
 というのがある。少年愛の対象として美少年ということである。童ということばが付いている。
 となると、相手の少年は老いるのである。そのオトナたる者は他に少年をもとめねばならないから、ホモはむかしから愛のためにいそがしかった。
 加賀藩に、藩祖前田利家(一五三八~九九)については「亜相公御夜話」という文献がある。
利家が十四歳で織田信長(一五三四~八二)につかえた翌年、少年の身ながら大きな武功をたてた。そのころ、かれはもはや「信長御秘蔵にて」という次第になっていた。が、利家が長ずると、信長は他の少年をもとめた。信長もいそがしかったのである。
 ヨーロッパでもこの種の伝統に変わりがない。
~中略~
ソクラテスもプラトンもはなはだしくその傾向をもった人たちだったが、かれらがなぜ抽象的な仕事にうちこむことができたかについては、斎藤忍隨(にんずい)氏が「プラトン」(岩波新書)のなかで、おもしろい考えをのべている。
少年の美は持続しにくく、このため関係が長続きしないため、男色者はつぎつぎ新しい少年をさがさなければならなかったというのである。つまりホモというのはつねに不毛でもあり、具体的な実り(出産)も期待できない。。「この二重の不毛性が」と再投資は述べ、愛はやがて「抽象的なものへのエロースへと純化し、昇華するのである」と結論づけている。

アメリカ素描
司馬 遼太郎(著)
新潮社; 改版 (1989/4/25)
P150

アメリカ素描 (新潮文庫)

アメリカ素描 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/04/25
  • メディア: 文庫

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アメリカ人が豊かなのは [雑学]

 僕があのとき確信したのは、「アメリカ人が豊かなのは、たくさん稼いでいるからじゃない。モノが安いから豊かなんだ」ということ。
~中略~

 一方のアメリカは、小売業が数百とか1000店舗以上の規模でチェーン展開している。だから川上に立って、メーカーにオリジナル商品を発注することができる。
 つまり、日本はもともと物価が高いのではなく、生産者から消費者へモノが流れていく段階に、ものすごくたくさんのムダが潜んでいるんです。だから消費者に届くときには、アメリカの3倍近い値段に膨れあがっている。
似鳥昭雄

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2010/7/23)
P154

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

 

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DNAの生存が第一 [雑学]

  チータに宿っているDNAの配列は、宿主のチータをしてガゼルを殺すように仕向けて、自らの生存を最大化する。ガゼルの体に宿るDNAの配列はその反対の目的を強く推進することで自らの生存を最大化するのである。
しかし、いずれの場合も最大化されるのはDNAの生存である。

遺伝子の川
リチャード ドーキンス (著), 垂水 雄二 (翻訳)
草思社 (2014/4/2)
P150


文庫 遺伝子の川 (草思社文庫)

文庫 遺伝子の川 (草思社文庫)

  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2014/04/02
  • メディア: 文庫

 



DSC_2706 (Small).JPG島根県松江市熊野大社

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アキサケ [雑学]

日本では昔からサケを「捨てるところがない」といわれるほど大切に利用してきました。北海道を中心に大量に漁獲されるシロザケは、秋になると産卵のために生まれた川に遡上します。
河口付近に仕掛けた定置網で一網打尽にする「アキサケ」は、関東以北の人々にとっては伝統的な馴染みの食材でした。
 しかし、現代の日本人が食べている「サケ」は、そのアキサケではなく多くがチリ産ギンザケなどの輸入サケ・マスです。産卵期前なので脂が抜け、色も味も薄くなるアキサケに比べて、輸入ものの養殖サケは真っ赤で脂の乗りもいい。そちらが人気となり、アキサケが食卓に上がる機会はほとんどなくなってしまいました。

日本人が知らない漁業の大問題
佐野 雅昭 (著)
新潮社 (2015/3/14)
P48


日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

  • 作者: 佐野 雅昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 新書

 




IMG_0106 (Small).JPG旭川市旭山動物園

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寡黙なる巨人 [雑学]

 もう体は回復しない。神経細胞は再生しないのだから、回復を期待するのは無意味だ。それだけは、この二年の間に思い知った。
ダンテの地獄篇に「この門をくぐるもの すべての希望をすてよ」とあったが、この病気(住人注:重度の脳梗塞)でも同じである。

 しかし私の中に、何か不思議な生き物が生まれつつあることに気づいたのは、いつごろからだろうか。始めのうちは異物のように蠢いているだけだったが、だんだんそいつは姿を現した。
 まず初めて自分の足で一歩を踏み出したとき、まるで巨人のように不器用なそいつに気づいた。
私の右足は麻痺して動かないから、私が歩いているわけではない。それでも毎日リハビリに励んでいるのは、彼のせいだと思う。
~中略~

 私はこの新しく生まれたものに賭けることにした。自分の体は回復しないが、巨人はいま形のあるものになりつつある。
彼の動きは鈍いし寡黙だ。それに時々は裏切る。この間こけたときは、右腕に大きなあざを作った。そのたび私は彼をなじる。
 でも時には、私に希望を与えてくれる。
~中略~

 もとの私は回復不能だが、新しい生命が体のあちこちでうまれつつあるのを私は楽しんでいる。
 昔の私の半身の神経支配が死んで、新しい人が生まれる。そう思って生きよう。そうすると萎えた足が、必死に体重を支えようと頑張っているのが、いとおしいものに思えてくる。

寡黙なる巨人
多田 富雄 (著), 養老 孟司 (著)
集英社 (2010/7/16)
P145

寡黙なる巨人 (集英社文庫)

寡黙なる巨人 (集英社文庫)

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/07/16
  • メディア: 文庫

 

  -f56e4.jpg崇福山 安楽寺3

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アンチエージング [雑学]

 ここに紹介しただけでも、DNAの損傷あり、活性酸素あり、テロメアあり、カロリー摂取あり。ほかにも、アポトーシスあり、ストレスあり、タンパクの異常あり、と、老化の原因は実にさまざまです。それらが重なり合った現象が老化の本態です。
老化研究が進み、いろいろなことがわかってきていますが、すべてを防ぐなどということは絶対にできないことです。がんのところで述べますが、がんを撲滅するのが不可能である、というのと同じ意味で、老化をなくす、ということは不可能です。
もちろん、ある程度、進行をおさえることは可能でしょう。それが、ご存じアンチエージングです。
 TVコマーシャルでもしょっちゅうやっていますし、クリニックもたくさんありますから、相当な需要がありそうです。アンチエージングに関係する学会に講演で呼ばれて行ったら、ミニスカートのおねえちゃんが外車を売っててびっくるしたことがありますから、きっとたくさん儲けてる先生もおられるのでしょう。
 もちろん、活性酸素を減らすなど、老化対策という意味だけでなく、健康のためにやったほうがいいだろうということもあります。しかし、老化はある意味で生理的なかていでもあるのです。
アンチエージングをやめろとは言いませんが、大枚をはたいている方は、そのことをふまえて、一度たちどまって考えてみれれてはどうでしょう。
 自慢じゃやりませんが、私は毛髪が不自由です。 ~中略~
 が、ある日、ふと思ったのです。いつまで続けるのか、と。そして、こんなことをしていいことがあるのか、と。抜け毛はある程度は防げても、着実に毛は減っていきます。主観的には抜け毛が減ったといっても、客観的にはハゲは着実に進行しているのです。~中略~
 育毛剤だけでなく、アンチエージング全般に似たようなことが言えるのではないかという気がします。我が国は、高齢「化」社会では、すでに超高齢社会になっています。
お年寄りが健康に生きる、というのは、もちろん大事なことです。でも、アンチエージングがもてはやされる社会というのは、必ずしも健康的ではないように思います。

こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)
P098

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義

  • 作者: 仲野徹
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: 単行本

P1000224.JPG宮島

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立山 [雑学]

 御師の村は、立山にふたつある。岩峅寺(いわくらじ)と芦峅寺(あしくらじ)である。
峅(くら)という異様な文字は、漢字ではなく日本製の文字で、おそらく修験者が考案したものであろう。ある種の地形をさす。
これが大和の大峰修験の領域であった大台ケ原などにゆくと、大蛇嵓(だいじゃぐら)といったふうに、嵓(くら)という文字があてられる。これも日本製である。ある種の地形とは、おそらくビルのように大きい断崖にはさまれた谷間をさすにちがいない。
中世の修験者たちはこういう地形を神聖視し、とくにくらとよんだかとおもわれる。
 修験道は、七世紀に出た役(えん)ノ小角(おずね)がそれをはじめた。
かれはやたらと山岳によじのぼった。好んで高山に登るということを、役ノ小角の同時代のどの民族もまだその例をもっていないのではないか。
人間にとって山は狩猟か、木を得るか、あるいは食料の採集のために存在したのだが、 ただ山に登るためにそれを登るという人間のあたらしい行動世界をひらいたのは、おそらく世界で役ノ小角が最初ではないかとおもわれる。
かれはしきりに日本中の高山に登ったが、しかし立山には登らなかった。奈良時代に入っても立山の頂上をきわめたという史的確証は得られないらしい。
 平安初期になって、ようやく出た。僧名を慈興と名乗る佐伯有若(さえきのわりわか)という人物で、かれが発心し、はじめて登った。
おそらく原生林を斧でもって伐りひらきながら、幾夜もかさねてよじのぼったにちがいなく、神秘的な恐怖や感動をふんだんに味わったことであろう。
 この人物が、立山御師の祖である。

街道をゆく (4)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/11)
P119

街道をゆく4

街道をゆく4

  • 作者: 司馬遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/08/07
  • メディア: Kindle版

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 大台ヶ原山; 奈良県; 大蛇嵓; 

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食費を制する者は家計を制する [雑学]

自分の生活習慣や消費行動を変えるというのは、なかなか難しいことだと思います。
 そんな時、私はまず家計の中でひとつの品目だけ意識して節約してみてください」とお伝えしています。それをこころがけるだけでも、ずいぶん家計が改善される方が多いのです。
 特に、食費をコントロールできるようになると、家計が大きく変わってくるな、とおいうのが、多くの方にアドバイスさせていただいた中で実感することです。
 「食費を制する者は家計を制する」といっても過言ではありません。


「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人
横山 光昭 (著)
PHP研究所 (2015/10/3)
P144




「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人 PHP文庫

「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人 PHP文庫

  • 作者: 横山 光昭
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/11/13
  • メディア: Kindle版


DSC_2753 (Small).JPG松江


タグ:横山 光昭
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