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根本的な福祉 [社会]

 人間の徳性・心情を棚に上げて、功利的見地から、はたしてまことの福祉を実現せられるでしょうか。近代国家の福祉政策というものにも大きな疑問があります。
簡単な好意から社会福祉を謳歌して、幼児の保育から始めて親の手から離し、国家社会の施設で育て、親の手数も金もかからぬようにし、病気も失業も養老もなにもかも社会政策で片づけてゆく、そのために人民は税金を払えばよいということが、はたして真理に合うものでしょうか。
 それは確かに、困っておる人々に少なからぬ利便を与えることには相違ないが、これが世人の観念になり、風習になることは、人間を次第に非人間化し、機械化するすることを免れません。
現にスウェ―デンでも、イギリスでも、すべて福祉政策国家の最近の情勢は、その福祉主義に次第に大いなる疑惑を生じ、物議を生じております。
そういう各国とも、青少年の風紀は乱れ、犯罪は悪質になり、自殺者の率は次第に高まり、民族が全体的にだらしなくなるという傾向を明らかにしておりましす。
 人間を物質や機械にしてしまえば簡単ですが、個性のある霊的な人間を取り扱うには、もっと慎重な用意が必要です。

 病気や貧困や弊害の応急対策もたいせつであるが、もっと根本的に人間そのものを改造し、世の中に生気を奮い起こす根本的な福祉を考えねばなりません。
特に青年の場合において、このことはたいせつであります。青年において消極的・利己的・享楽的気分や放縦な習慣ほど悪いものはありません。かの橋本佐内の「啓発禄」で言うならば「根気」、気を振るう、青年の全エネルギーを奮い起こすことが大事です。

安岡正篤
   運命を開く―人間学講話
  プレジデント社 (1986/11)
   P173

宇治川 (33) (Small).JPG宇治川


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