大阪の食い倒れ [言葉]
近世から「京の着倒れ・大坂の食い倒れ」といわれてきた。食い倒れとは、飲食にぜいたくをして財産をつぶしてしまうことである。果たしてそうなのか。
平成元年の「全国消費実態調査報告」の各府県別の家計分析で、食費を全支出で割ったいわゆるエンゲル係数を見てみる。大阪は二八・〇%で、全国平均の二六・五よりは高い。東京は二六・一である。しかし京都は二九・一で大阪よりうえになり、全国平均よりはかなり高い数字である。むしろ京都の方が食い倒れといえる。
~中略~
大阪の食い倒れとは、味にぜいたくする意味とは少し違う。食べ物で倒産した話を、大阪で聞いたことがない。
京都は将来また売れる着物を財産として残す。大阪の食い倒れとは、あすの活動のために、食事にけちけちしないことを意味している。ただ、安くて栄養があってうまいものを選ぶ。
大阪学
大谷 晃一 (著)
新潮社 (1996/12)
P61
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