SSブログ

杉材 [雑学]

 杉が建材として流行したのは、せいぜい室町時代ごろからかと思える。古い寺院建築や書院造りの建物をみても、ヒノキのようなずっしりした硬い材が主役で、杉のような軟かくてかるがるした材は、せいぜい杉戸のようなものとして使われていた程度のようである。
室町期に、茶室を中心に発達した数奇屋造りがさかんにおこなわれてから、杉が主役になったのであろう。
 いまの日本の住宅建築は、数奇屋造りの系譜をひいている。杉の軽みともくの美しさがよろこばれて、天井板や欄間に使われたり、たるきや床柱に使われてきた。強度などよりも装飾的に杉がよろこばれたという室町期の美学が、四百年以上にわたって日本建築を支配しつづけているのである。
室町期の偉大さに感じ入ってしまうが、逆に言えば、後世の不勉強といえなくもない。

街道をゆく (8)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1995)
P118


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント