因果は複雑系 [ものの見方、考え方]
たとえばこういうことがあるでしょ。社会的に大きな業績を上げている人は、だいたいメタボな人が多い。
特に実利的なこと、学問の業績とかではなくて、大きな事業を起こしたりする人はお金が入って、いいものを食べるから太っていて、それで早く死んだりするとしばしば言われるけど、実はそうではないの。
そうではなくて、糖尿病の遺伝子を持っている人たちはしばしば尿酸値が高くなる体質で、日常、普通に健診して尿酸値が高い人は社会的アクティビティが高いんです。これはどういう因果関係なのか分からないけれど、経験的にそうです。
それから躁病の遺伝子を持っている人も尿酸値が高いことが多い。尿酸値の高い人は社会的アクティビティが高いから、睡眠時間が短くて、活動的で、事業を起こして、お金を儲けて、派手にやっています。そして、いいものを食べて痛風になる。
痛風が「帝王の病」と言われていたのも、帝王はいいものばかりを食べて、運動をしないから痛風になるのではなくて、いいものを食べて痛風になるような人は、王様になりやすいの。絶対にそうなの。
そうするとメタボに対峙して、いつもジョギングなんかして痩せていれば、社会的活動はあまりしないので、その人は帝王になれないのかもしれない。その種のことが、いろいろとあるわけです。
それから、メタボを治そうと思って一所懸命やっているうちに、メタボ治療の方法とかを発明して、メタボになるような人はそれを売って金儲けをして、その結果、またメタボになったりするかもしれん。
今のは分かりやすいように例を引いただけで、複雑系とは、そういういろんなものの組み合わせなんです。
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P205
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