丸裸の実力 [哲学]
人が衣服を脱がされたあとで、どこまで自分の地位を保てるかというのは興味深い問題である。―「森の生活」
ソロー語録
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(著), 岩政 伸治 (翻訳)
文遊社 (2009/10)
P40
昔の武士は、ふだんはみずから土に親しんで耕作に従事していたが、恥辱には堪えられぬ、人には負けぬという逞(たくま)しい気概は日ごろから養っていて、何か一大事が勃発して、天皇様や将軍から召集の命令が下れば、即座に隙鍬を武器に持替え一軍の将となり、虎や狼のような猛々しい軍勢を手足のごとく指揮したものであった。~中略~
これに反し最近の武士は、勇気はないし道義には薄く、戦いに勝つための工夫策略にもとぼしいから、とても敵の大軍中に突撃して、縦横無尽に駆回ることなどできはしないし、まして、主君の参謀として作戦を練り、味方を勝利に導く大勲功をあげることなど思いもよらない。
そんな状態であるから、もし腰の太刀・小刀を奪い取って、武士としての形をなくしてしまえば、その気概や思慮の深さなど、一つとして町人百姓より勝れた点はないであろう。
百姓は毎日身を粉にして働いているし、町人は常に商売と世渡りの工夫に才覚を働かせているから、
今日にも天下の一大事が生じた時、見事手柄をたて功名をあげる者は、武士ではなく、町人百姓の中から出現するであろう。
啓発録
橋本 左内 (著)
講談社 (1982/7/7)
P29
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