サウジアラビア [国際社会]
池上 ~前略
サウジアラビアでは、結婚は「同時期に四人まで」の枠さえ守ればいいので、王族の中には妻が延べ十数人という例があります。だからオサマ・ビン・ラビンだって、兄弟が四〇人とか、すごくたくさんいますね。そのそれぞれがまた同じようなことをするので、人数が増えていきます。
佐藤 ただ、そうしないと、各部族のバランスが取れないわけです。別に自由恋愛で結婚しているのではなく、部族間のバランスのために結婚して子供をつくっておかないと具合が悪いという面もある。結婚が政治になっている。
基本的に「サウジアラビア」というのは「サウド家のアラビア」という意味ですから、家産国家です。三〇年くらい前まで国家予算というものがなかった。国家予算と家計が渾然一体となっていた。
池上 全部サウド家の私的財産で賄っていた。
佐藤 国会も国政選挙もありませんが、国すなわちサウド家が国民の生活の面倒をぜんぶ見てくれる。汚い仕事やきつい仕事はイエメン人やパキスタン人にやらせて、サウジアラビア人は高級官僚になる。今だって王族が巡行するときに、メープル金貨などの袋を持って行ってベドウィンなどに配っているじゃありませんか。
池上 「サウジアラビア」は「サウド家の土地だよ」という意味であって、われわれがそれを勝手に国家と呼んでいるだけです。
新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方
池上 彰(著), 佐藤 優(著)
文藝春秋 (2014/11/20)
P134
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