二〇五〇年問題 [国際社会]
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佐藤 これ(白人警官による黒人射殺をきっかけとした騒動)は、アメリカの公民権運動が、未だ成功していない、ということを示す象徴的事件ですね。
アメリカの民主主義は、黒人、あるいは先住民を排除したところに成り立つ民主主義であり、この問題がいまだに克服されていないことが白日の下にさらされてしまったわけです。
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池上 「二〇五〇年問題」とは、建国以来、圧倒的に優位だった白人が、人口数として少数派に転ずるのではないか、という問題ですね。
ヒスパニック(アメリカに住むスペイン語を母語とする中南米出身者やその子孫)、今は「ラティーノ」と呼ぶことになっていますが、そのラティーノの人口がどんどん増えています。
そして、ラティーノの増大は、共和党にとってより深刻です。ラティーノは、大きな政府主義、民主党支持者が多いので、共和党が選挙に勝てなくなるという問題があります。
佐藤 人口逆転が起きたら、国全体でみれば、共和党は選挙に勝てなくなる。今のスローガンとは別のものを出さなければなりません。
しかし、一方で実質的な権力を握っているのは、数としては少数派のウオールストリートであり、WASP(アングロサクソン系白人プロテスタント)である、という構造は依然として変わらない。
そうすると、アメリカにおける統治のしくみが大きく変化せざるをえなくなります。民主主義というツールは実行力を失っていくでしょう。
新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方
池上 彰(著), 佐藤 優(著)
文藝春秋 (2014/11/20)
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