恐るべき昆虫 [雑学]
そして病気を媒介する昆虫としてもっとも恐るべきものは、ハエ目カ科のカである。「カに指された程度という言葉があるように、カに刺されても、多くの場合は一過性の痒みしかないが、媒介する病気の威力には背筋の凍るものが多い。 実は世界的に見て、野生動物によるヒトの死亡原因の第一位はカが媒介する感染症である。その数は殺人(第二位)よりもずっと多いという。
そして、その感染症のなかでも、ハマダラカのなかま(写真114)が媒介するマラリアがもっとも注目すべき病気である。~中略~
よ訪れるタイの調査地で、そこえお少し前に訪れた植物研究者が悪性のマラリアで亡くなったと聞いたこともあり、私のような熱帯で調査する者にとっては、身近な恐怖である。
日本で昔「おこり」として恐れられた病気もマラリアだといわれている。比較的最近まで北海道から沖縄まで土着していた歴史があり、沖縄のある島の集落では、マラリアで廃村になった例も少なくない。
そのほか、デング熱、日本脳炎、バンクロフト糸状虫症など、カの媒介する感染症は枚挙にいとまがない。
昆虫はすごい
丸山 宗利 (著)
光文社 (2014/8/7)
P210
P213
最近ではSFTS(住人注;重症熱性血小板減少症候群)という致死率の高い病気が見つかって注目を集めているが、感染症という点では、日本では昆虫よりもダニ(マダニやツツガムシのなかま)がずっと怖い。
あまり知られていないが、恐ろしいダニ媒介性脳炎も日本に存在する。これはヨーロッパから極東ロシアにかけての流行地でいくつかの型があり、いずれも致死率が高いうえ、治療しても重い後遺症が残ることがある。
また数種のリケッチャ症は日本の広い地域でツツガムシやマダニが持っている。冷涼な地域ではマダニが媒介するライム病というのもある。これらの病気も症状が重く、治療が遅れると死に至ることが少なくない。
近年、日本各地でシカやイノシシが非常に増えており、それらが人里に出没することが増えている。それに伴って、それらに寄生するマダニ類も身近な存在になりつつあり、ダニに刺される機会も多くなってきている可能性が高い。
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