生意を暢(の)ぶる [ものの見方、考え方]
人情、鶯の啼くを聴けば則ち喜び、
蛙の鳴くを聞けば則ち厭う。
花を見れば則ちこれを培わんと思い、
草に遇えば則ちこれを去らんと欲す。
但( た)だこれ、形気を以って事を用うるのみ。
若し性天を以ってこれを視れば、何者か、自らその天機を鳴らすに非ざらん。
自らその生意を暢( の)ぶるに非ざらん。
洪自誠
守屋 洋 (著), 守屋淳 (著)
菜根譚の名言 ベスト100
PHP研究所 (2007/7/14)
P139
鶯の声を聞くと、いいなあと思い、蛙の声を聞くと、うるさいと感じる。
花を見れば、植えてみようかと思い、雑草をみれば、抜いてしまおうとする。
これが人情だ。
しかしこれは、上っ面だけにとらわれた見方にすぎない。
内面的な価値に則してみれば、生きとし生けるものすべてが、天から授かった本性のままに鳴き、そして生きているのである。
はらぺこあおむし(エリック・カール、偕成社)が自分の食べるものを限っているのは、食べ物をめぐる無用な競争をできるだけ避けるためである。分を守って棲み分けているのだ。
そして、はらぺこあおむしが一心不乱に食べるのは、生き急いでいるからである。行く夏に間に合うように。早く蝶になってパートナーと出会えるように。虫たちの命はひと夏よりもずっと短い。
福岡 伸一 (著)
ルリボシカミキリの青
文藝春秋 (2010/4/23)
P49
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