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50パーセント生存期間

私が1990年に、横浜の一般病院で、当時の上司の部長とともに「本人に告げる」という方針を打ち出した時は、院内でも学会でも好奇の目で見られたものである。
 いまや病名告知は当たり前で、「進んだ」「良心的な」病院では余命の告知まで、「患者の自己決定権の尊重のため」に伝えている。あと半年とか、あと2年とかいうやつで、よくドラマやなにかでも出てくる。
~中略~
 私はこの流れに反対である。病名告知を「真っ先に始めた」くせに矛盾するとお考えだろうか?  なぜに反対するか、最大の理由は、そんな数字は当たらないからである。何が証拠にそう言うかは、もう一度周囲をご覧になればよい。
 あなたの周りでも、もしくはマスコミに出て来る著名人でも、ネットの闘病記でも、「1年といわれたが、みごとに1年で死んじゃった」なんて例がどのくらあるか?
~中略~
 しかしそういう時に、そもそも最初の「1年」というのが嘘だったのではないかと、どうして考えないのだろうか。

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P63

DSC_0910 (Small).JPG両子寺

P64
 そもそも「1年」という根拠は何か。平均、ではない。確かに今までのデータから出されたものではあるが、集団の生存率の代表値として出されるのは「50パーセント生存期間」もしくは「生存期間中央値」といわれるもので、これは半分の人が亡くなるまでの期間である。
~中略~
 試しに、もしあなたが「あと1年」と言われたら(そんなことはないように祈っているが)、医者に、「じゃあ半年は大丈夫なんですね」と聞いてみればよい。必ず口ごもって、「そうとも言えない」と答える。
「え?じゃあ、あと半年ってことなんですか?」「いやそうじゃないんですけど」「さすがに3ヶ月くらいは絶対大丈夫ですよね?」「それもちょっと・・・」「だって1年って、おっしゃったじゃないですか!」
 これは最初の質問を、「じゃあ、2年はもう生きられないんですね」と変えても同じである。3ヶ月以内かもしれない。3年以上かもしれない、そういう「余命一年」の数字に、意味があるのか?
日本人の平均寿命が、この、今オギャーと生まれた赤ん坊が死ぬまでの期間を規定すると考えるくらいナンセンスである。
里見清一


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