狛犬 [雑学]
王陵のそばに、石人がいる。花崗岩のその彫像は千数百年の風雪のため風化がはなはだしいが、それでもなお文官である宰相は冠をただして立ち武官である将軍はひじを張り、剣を杖ついてもし侵入者がくれば一喝してしりぞけようとしている。
狛犬もいる。
この犬たちはたくましく前足を聳えさせながら城内に危険な者が入りこめば激しく吠声(はいせい)を発しようとしている。
かれらもまた石人とともに風化しているが、しかし王陵を守ろうとするけものの気魄はうしなっていない。
この石犬だけは日本の神社などにつたわって、その故郷の名を冠して高麗犬(狛犬)とよばれているのである。
街道をゆく (2)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1978/10)
P110
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