フロイトの精神分析 [雑学]
精神分析と聞けば、誰よりもまずジグムント・フロイトの名を思い出す人が大半だと思います。~中略~
また、もともとはフロイトの共同研究者で、のちに、袂を分かって独自の心理学を築きあげたカール・ユングも、日本では人気があります。
~中略~
この二人の名前が日本で有名なのは、国内の専門家の多くが、フロイトやユングを高く評価しているからでしょう。先ほど「古い理論」といったのは、まさにフロイトとユングの心理学のことです。
とくにフロイト理論の信奉者は多く、学会で新しい精神分析理論について発表すると、彼らから反発を受けることが少なくありません。
「フロイトはそんなこといっていない!」
と、大変な剣幕で怒り出す学者もいるぐらいです。
自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)
P18
P20
しかし、ユングやアドラーがそうだったように、フロイトの精神分析に限界や反発を感じて、そこから離れていった研究者がたくさんいるのも事実。それによって精神分析の世界は幅が広がり、さまざまな理論や手法が生み出されてきたのですから、いつまでもフロイト理論だけにしがみついていたのでは、この分野を発展させることはできません。
そして、本書の主人公であるコフートも、もともとはフロイトの弟子的な立場の人でした。それも、一時はフロイト学派の「優等生」と呼ばれたほどの存在です。当初はフロイトのことを心から尊敬し、その理論に心酔していました。
P28
フロイトは当初、人間の心の世界が「意識・前意識・無意識」の三層構造になっていると考えました。その中で、心の病気の原因となる傷や葛藤は、患者自身にはまったくわからない「無意識」の領域にある。それを「意識」のレベルまで引き上げなければ、症状は良くならないと考えました。
無意識の世界を見ることはできませんが、それをうかがい知るためのヒントはあります。
フロイトは、無意識にある傷や葛藤が形を変えて「前意識」に浮かび上がり、それが睡眠中の夢やリラックス状態の自由連想に姿を現すと考えました。
~中略~
このように心の世界を三層構造で考えるフロイトの理論を「局所論モデル」といいます。
しかしフロイトはその後、大胆なモデルチェンジを行いました。
P31
フロイトはそういうことも含めて「構造論モデル」と呼ばれる理論を考え出しました。
局所論とは違い、こちらでは人間の心が「エス・自我・超自我」の三つで構成されていると考えます。
エスとは、性欲や攻撃性なおの動物的な本能のこと。それが暴れないようにコントロールする理性のようなものが、自我です。
自我が弱い人は、本能的な欲動が野放しになってしまいます。
では、超自我とは何か。こちらは、親から植え付けられた無意識の道徳観や価値観などのことです。これが心の中で、エスや自我に向かって「そんなことをしてはいけない」「そんな人間になってはダメだ」などといった禁止命令を出しているとフロイトは考えました。
したがって、これが強すぎても、心のバランスは取れません。しかも無意識で禁止命令を出すので、うつになったり、身体の苦しみのような形で現れます。性欲を抑圧して神経症になる女性も、この超自我が強すぎることが病気の一因だといえるでしょう。
それを食い止めるには、自我が重要な役割を果たします。自我は、エスをコントロールするだけでなく、超自我の感情な禁止命令とも戦わなければいけません。
P34
フロイトのは決して「万能」ではありません。あらゆる心の病を治せるわけではなく、治療対象は基本的に「神経症レベル」の患者だけでした。
~中略~
神経症患者は薬に奪われ、精神病は治せないとなると、残るのはボーダーラインだけになります。精神分析が生き残るには、これに対する有効な知慮法を生み出さなければいけません。
しかし、ボーダーラインも精神病ほどではないにしろ、フロイトの精神分析ではあまり良くならないことがわかっていました。
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