進退について [処世]
鋭進の工夫は固( もと )より易からず。
退歩の工夫は尤( もっと )も難し。
惟だ有識者のみ庶機( ちか )からん。
「 言志晩録 」第二三六条
佐藤 一斎 著
岬龍 一郎 編訳
現代語抄訳 言志四録
PHP研究所(2005/5/26)
P179
勢いに乗って突き進み、事を成すのは、もとより簡単なことではない。
だが、それ以上に難しいのは、引退の時期を決める時である。
見識のある者だけが、それができる。
功成り名遂げて、身退くは天の道成り
老子
進むときは人任せ、退く時はみずから決せよ。
河合 継之助
歩を進むる処、便( すなわ)ち歩を退くを思わば、庶( こいねが)わくは藩( まがき)に触るるの禍を免れん。
手を着くる時、先ず手を放つを図らば、纔( わずか)に虎に騎( の)るの危うきを免れん。
洪自誠
守屋 洋 ( 著), 守屋淳 ( 著)
菜根譚の名言 ベスト100
PHP研究所 ( 2007/7/14)
P217
前に進むときは、必ず後ろに退くことを考えよ。
そうすれば、垣根に角を突っ込んだ羊のように、身動きが取れなくなる恐れはない。
手を着けるときには、まず手を引くことを考えよ。
そうすれば、虎の背に乗ったときのように、やみくもに突っ走る危険を避けることができる。
突進するだけで退路を考えない人に複雑な平和の構築などできるわけがない。私はどちらかというと、退路ばかり考えていて「進むのをやめておけば退路もいらない」などと滑稽な用心をするたちだが、ほんとうの指揮官や人生の「達者」は、常時綿密に双方向を考えていなければならないものだと思っている。
人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P189
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