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リスクは分散、時々再評価 [ものの見方、考え方]

P135
  2007年のペットフードと2008年の乳児用ミルクのメラミン事件に共通しているのは、被害が出たのは毎日同じものだけを食べる集団だったということです。

このような毎日同じものだけという食生活はなにかの汚染があったときはもちろんのこと、そうでない場合でもリスクが高いものなのです。

P139
リスク分析の考え方は私たちが日常生活を送るうえでも役に立ちます。
なんらかの問題に直面したとき、それがどういう問題であるか見極め、自分にとっての影響をできるだけ正確に見積もり(リスク評価)、
いくつかの選択肢の中からベストと思われるものを選択し、必要に応じて評価・見直しを行う、という一連の対応はふつうの人でも無意識のうちにやっているものです。

畝山 智香子 (著)
ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想
化学同人 (2009/11/30)

ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)

ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)

  • 作者: 畝山 智香子
  • 出版社/メーカー: 化学同人
  • 発売日: 2009/11/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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P36
池田 たとえば、六千五百万円前の白亜紀末に代隕石が衝突した際の津波の高さは一千メートルだったと推定されている。
それを考えたら、どこまで「想定」すべきかなんてことに際限はないですよ。
一千メートルの津波を想定した防波堤なんて現実的に造れませんよね。
池田 清彦

P44
養老 さきほど話に出た、釜石の防波堤というのは、二年前に完成したものだったそうですが、造るのに千二百億円もかかったといいます。
防波堤ひとつとってもこれだけの巨額の金がかかる―しかもその防波堤をさえ津波は乗り越えて街を襲った―のだから、せっかくお金をかけてかけるのならやっぱり町を移転したほうがいいんじゃないかと思ってしまうけど、地元の人にしてみればそうではないのでしょう。

ほんとうの復興
池田 清彦 (著), 養老 孟司 (著)
新潮社 (2011/06)

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: 単行本



 どのようなリスクがあるかを正確に分析し、それに基づいて優れた意思決定をしても、結果が伴わない場合がある、ということも覚えておく必要があるでしょう。リスクがなくなるわけではないからです。


20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ
(著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P116

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー



早野 ひとつは、ぼくがこれまでに、200ミリシーベルト近い放射線をすでに浴びているということです。ほとんどは医療被ばくです。
 いまから10年以上前ですが、ぼくは肺にガンが見つかって、右肺上葉切除、つまり右の肺を半分切ってるんです。いま広く使われているCTは旧型で、検査のときに浴びる放射線量がまだ高かったんです。手術前の検査、それから手術時、そのあとの確認作業も含めてすべて合わせて計算してみると、医療被ばくが200ミリシーベルト近くになってました。だから、まあ、200ミリシーベルトぐらい浴びても即死しないってことは、自分の身をもってよく知っていたわけです。
糸井 200ミリシーベルトってかなりの量ですよね。人が自然界から受けている放射線量の目安が年間1ミリシーベルトですから、その200倍。
早野 そう。ただし、その200ミリシーベルトは、私がそのCT検査を受けることと受けないことのメリット、デメリットを天秤にかけて、きちんと選んだ結果、浴びたものですから、今回の事故みたいに、一方的に突然放射性物質が降ってきたということは、まったく意味が違いますよね。
放射線を浴びた体にとっては、医療被ばくも同じ放射線で、区別はないんだけれども、受ける状況によって本人にとっての意味合いはまったく違う。
糸井 そうですね。意味としては違う。でも、純粋に放射線量として考えれば、早野先生はそれだけの量を震災前に経験していたということですね。
早野 はいですから、放射線被曝を考えるときに、「ある定量を超えたとたんに、何か悪いことがすぐに起きるわけではない」ということ、あるいは「100ミリシーベルト単位もの放射線を浴びせるということを、お医者さんは治療のためなら選択する」といった事実は知っていました。
 また、200ミリシーベルトの医療被ばくから10年以上経っていますが、ぼくがそれによって再度ガンになっているということもない。将来はわかりませんけど、いまのところは健康に影響がないということも知っている。
糸井 ちなみに、早野さんの場合は、毎月ジュネーブに行かれていますよね。飛行機による被ばくも相当あるんじゃないですか。
早野 わりと大きいですよ。日本とジュネーブを行き来するときの被ばく量は季節によって違うんですけど、大体片道0.07、往復で0.14ミリシーベルトぐらい。ぼくは年に10回以上、だいたい毎月1回ぐらい往復するので、そうすると、それで年に浴びるのは、2ミリシーベルトぐらいですかね。国際線のフライトアテンダントの方はぼくの2倍ぐらい浴びていると思います。
~中略~
 ですから、放射線量の問題に関しては、各個人が自分の事情にあわせてメリットとデメリットを比較して判断する事が重要で、かつ、簡単に決められることではないんだということは、自分の経験からも強く感じていました。
糸井 なるほど。
早野 被ばくに関するもうひとつの経験は、ぼくが物理学科の学生だったころの話です。大学にある小さな加速器(原子核の実験に用いる装置)を使った施設で、実験をやっていたんです。
加速器のある部屋には出入り口のところに放射線のモニターがあって、体が放射線で汚れていないことをチェックしてから部屋を出ることになっていました。
 ある日、女性の技術者がそれに乗ったところ、すごく高い反応があって警報が鳴り響いたんです。これは加速器のどこかで大変なことが起きたに違いないってことになって、汚染源を突き止めるために、みんなでサーベイメーター(携帯用放射線測定器)を持って加速器の中を調べました。でも、なかなか見つからない。そしたら、外に通じる廊下、そこに足跡のように、飛び飛びに汚染が続いてるってことがわかったんですね。
つまり、汚染は加速器の中ではなく、外から来ていた。
 それで、外へ出てみて計測してみたところ、あたり一面が汚染されているという状態でした。
~中略~
 研究室にはサーベイメーターだけでなくゲルマニウム検出器もあったので、汚染源が何なのか詳しく調べてみました。すると、核分裂以外では生じえないものが検出されたんです。
 つまり、「これはどこかの国が核実験をやったに違いない」と。
 その時点では、まだニュースも流れていなかったんですが、後日、中国が大気圏内核実験やった直後だったということがわかったんです。 ~中略~ 核実験の後に東京に雨が降って、その放射線をぐうぜんに計測してしまったわけです。
糸井 大事件ですねそれが。
早野 1973年、東京の都心での出来事です。~中略~ 
 それはぼくにとってある意味、強烈な原体験でした。
 ぼくは核分裂というのはどういうγ線を出すかということを実際に計測して初めて知りましたし、核分裂で降ってくるフォールアウト(放射性降下物)というのは、雨と共に一様に広く薄く散らばるんじゃなくて、わりと、ゴロンゴロンと粒で地上に残ることも知りました。
また、汚染された靴を洗ったりシャワーを浴びたりして、その程度の汚染であれば、洗い流せるということも知ったんです。
糸井 当時、東京にいた人たちは、何も知らずにフォールアウトの雨の中にいたんですね。
~中略~
早野 ~中略~
 地域差があるので一概には言えませんが、少なくとも首都圏に関しては、1973年のフォールアウトと比較しても、(住人注;今回の事故の数値は)それほど心配するレベルではないなと。また、この程度の数値であれば、放射線によって福島の方が将来バタバタと体を壊していくようなことは決して起こらない。それを早い時点で確信していたので、たしか3月14日には、そのようにツイートしていたと思います。

知ろうとすること。
早野 龍五 (著), 糸井 重里 (著)

新潮社 (2014/9/27)
P32

知ろうとすること。 (新潮文庫)

知ろうとすること。 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫



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