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人の痛みがわかるか [雑学]

  ところが驚いたことに、痛みを与えられて反応した脳部位は「痛覚経路」だけではなかった。「帯状野」や「島皮質」と呼ばれる場所も同時に反応したのだ。謎めいた発見だった。
なんのためにこうした部位までが活動するのだろうか。
 回答は意外な実験からもたらされた。これらの部位は、自分だけでなく、他人が苦しんでいるのを見ているときにも反応することがわかったのだ。
「痛いだろうなあ」とゾワゾワする感覚、あれを生み出すのが帯状野や島皮質の活動だったのだ。
他人の苦痛を感知する優しい神経。シンガー博士はこれを「同情ニューロン」と名づけた。 ニューロンとは「神経細胞」のこと。

 彼女の研究が面白いのは、しかし、ここからである。同情ニューロンが活動したのは、痛がる相手が近親や恋人だった場合のみで、見知らぬ他人の場合は反応しなかったのだ。
ましてや嫌いな人が苦しんでいたら「ざまあみろ」という感じであろうか。

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二 (著)
祥伝社 (2006/09)
P131  

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

  • 作者: 裕二, 池谷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫

 

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緒方宮迫西石仏

P152
 心はいろいろとゆらいでいて、「これを言いたい」とか、「あんなことを言いたい」とか思いますが、実際に決断して口から出てくるのは、そのうちのほんの一部です。
「うわ、この彼女の手料理、まずい」とか「隣の人は息が臭いなあ」などという感情は自然に生まれてくるものです。これを避けることはできません。
でも、たいていの人は、そうした感想をそのまま口にすることはありません。社会通念に照らし合わせて、言ってよいものといけないものを判断しています。

 

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)

  • 作者: 裕二, 池谷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 文庫

 

P17
「客観的身体像」とは、<身体の一般的普遍的な見立て>といったところのものであり、治療者と患者に共有される身体像を指すために、原則的に一つである。
身体科で採用される数多くの検査データなどはこれにあたる。
「主観的身体像(P)」とは、<患者の有する自己の身体イメージ>と表現したものであり、対自的、ゆえに自閉的であるのが大きな特徴である。たとえば、患者自身の頭痛の自覚などがこれにあたる。
「主観的身体像(T)」は、これまでその重要性があまり顧みられなかったものである。<治療者が患者の身体について感じたこと>というのが、その意味するところであるのだが、これではわかりにくいので、<治療者が自らの身体を映し鏡にして、患者の身体をモニタリングしたもの>とすればイメージが浮かびやすいだろう。
治療者が自らの身体に頭痛があることを想定して、それをもとに想像してみた患者の訴える頭痛のつらさなどが、この一例である。

P44
 しかしどうしても、治療者が「主観的身体像(P)」の理解に及ばないときもある。その場合、治療者の心のうちで一種のジレンマが生じてくる。それは、了解し得ない者に対する無力感と苛立ち、同時にその感情を受け入れまいとするつよい否認の機制である。だが、この内なるジレンマに治療者がどのように向き合うかが、治療のカギとなるであろう。
 もし、患者の訴える主観的身体像の<わからなさ>を容認することができるなら(治療者の「主観的身体像(T)]の歩み寄り)、患者の持つ苦痛と絶望をいくぶん和らげ、訴えも少なくしてゆけるだろう。
~中略~
 また、治療者が患者に向けて「異常ありません」、「神経(気)のせいでは」といった言葉をかけるかわりに、謙譲の心をもって「私たちの検査では異常が見出せません」、あるいは「わかりません」と伝えてゆくような姿勢が、理想とすべき治療者―患者関係を築く礎になるに違いない。

精神科医になる―患者を“わかる”ということ
熊木 徹夫 (著)
中央公論新社 (2004/05)

精神科医になる 患者を〈わかる〉ということ (中公新書)

精神科医になる 患者を〈わかる〉ということ (中公新書)

  • 作者: 熊木徹夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: Kindle版

 


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