合成の誤謬 [言葉]
それぞれの個人や企業が、将来のために、あるいは後継者や周囲の人々のために、良かれと思う善行を積むと、結果としては社会全体が悪くなってしまう―こうした現象を、経済学では「合成の誤謬」と呼ぶ。
この最もわかりやすい例が、倹約・勤勉と不況との関係だろう。一般的には倹約も勤勉も人間の美徳であり、社会の良俗である。
ところが、みんなが倹約に努めれば需要は伸びず、勤勉に励めば生産が増え、結果としては売れ残りが大量に出て大不況に陥る。
こんなとき、人々がいちだんと倹約して将来に備えて貯蓄し、企業が経費を削減して生産性を上げれば、ますます不況は深刻になり、失業者や倒産企業が増加する。みんなが良いことをすればするほど、全体が悪くなり、互いに苦しめ合うことになるわけだ。
「明日を想う」
堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P101
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