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「素」の美しさ [雑学]

なげいれの花は、心にとまった花をさっと摑み、さっと水に放つもの。花そのものだけでなく、その背後にあるなにものかをすくいとることが大事で、そこに、わずかに、人為の余地があります。
 若いころより、なげいれの対極にある「たてはな」にも取りくんできました。~中略~ たてはなは室町時代に書院飾りの花として生まれた様式で、「いけばな」の原型となるものです。~中略~
 古代において「たてる」という行為は、花にかぎらずカミへの祈りの意味をもちます。当初のたてはなは、神仏とかわりないものだったはずです。
 しかし実際には、花をたてることは、器のなかで花を「とめる」ことです。花をとめるという行為は、人為そのものであり、そこにさまざまな工夫が生まれ、そうした人為を競う花として、近世に「いけばな」が成立します。
 日本という国の祖型は、いまでも、人為のおよばない自然ではないかと、私は考えています。「素」の美しさをとうとぶ心情も、そこに由来するものでしょう。草木になかば埋もれるような暮らしの中から生まれたなげいれは、素の花です。
人為を加えず、草木花のおのずからなる姿をめでる花。たてはなやいけばなとはことなる出自をもつなげいれの花に、美と心を見いだしたのは、わび茶の湯の茶人でした。
 素とは、引くことも足すこともできないものです。

川瀬敏郎 一日一花
川瀬 敏郎 (著)
新潮社 (2012/12/21)
P4

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タグ:川瀬 敏郎
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