無名人になろう [処世]
人間は無力なように見えて非常に有力なことがあります。有力に見えて無力なことがあります。有力に見えて無力なことがあります。
本体、人間は案外、成功すると無力になるものです。有名になると無力になるものです。
かえって無名であることが、有力であることが多い。私はたえず「有名無力、無名有力」ということを言う。特に若い人によく言う。
君たちは決して有名になろうとしてはいかん。有名は多く無力になる。そうではなく、無名にして有力な人になることを考えなければならない。本当に有力な人になろうと思ったら、なるべく無名でおることを考えなければならん。
有名になったらもう何もできなくなるのです。
有名人になってごらんなさい。朝起きたら、もう人が来るでしょう。電話がかかる。書類がたくさん集まってくる。付き合いも広くなる。義理も多くなる。結婚式にも行かなければいかん。葬式にも行かなければいかん。いろんな会合にも出なければならん。朝から晩まで何をしているか訳が分からない。
「忙しい、忙しい」というのが有名人の口癖です。「忙」という字は忄(住人注;りっしんべん)偏に亡ぶ、と書いてある。”心が亡くなる”ということで、忙しいと本当に心が亡くなる。
~中略~
本当に偉くなろうと思ったら、なるべく無名でおらないといけません。これは私が無責任なことを言うのではなく、私自身がもう悩んでいることです。
やりたい事がたくさんある。勉強したいことがたくさんある。やっと、この年になって世の中のことが、人間が分かってきたような気がする。ここで勉強しようと思うのですが、~後略
安岡正篤
運命を開く―人間学講話
プレジデント社 (1986/11)
P138
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