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幣切り行事 [見仏]

 等覚寺(とがくじ)の祭りは四月一九日である。
 ここで最高の見物は、高い松柱を立て、その柱の上で山伏が御幣を切る一場面がある。
松会のクライマックスは、この一瞬である。
 それはどういうことかというと、斎庭で行われる田行事、お田植の行事を女性の陰にみたて、高い松柱を男性の陽となぞらえ、松柱の上で切り落とされる御幣を神の御種子とし、一種の交合の世界をリアルに演出したもので、山伏らしい祭りの在り方がここにある。
~中略~
いよいよ幣切り行事になると、これまで御幣は御輿の前に安置されており、これを御田盛一臈(祭りの当務役)が背に負い、葛(かずら)をつたって登ってゆく。ところがこの御幣とは、いわゆる権現である。
権現とは仏の権(かり)の姿で、仏様の意味をもつ。山伏の祭り、また権現の祭りとは神仏習合という二重構造をもち、御輿に仏が乗ったということと、御幣に内在する神は仏であり、また仏が神であるという姿のものである。
~中略~
 さて、その御幣が切り落とされた。白い弊紙が空を舞ってひらひら落ちる。その様は、この祭りの最高潮のときで、これは神の世界の陰陽交合を表したものである。そのとき参詣の観衆たちは、大きな拍手を送りどよめく。
 斎庭には、お田植行事の中でモミ種が蒔かれるが、これには神の御種子が宿り、観衆はそのモミ種を拾い自家のモミ種に交合して、苗代に蒔く。
 秋の実りは、このように神の御種子の交配により、豊穣が約束されるのである。祭の効用は霊験あらたかなものとなって現れる。

山伏まんだら―求菩提山(くぼてさん)修験遺跡にみる
重松 敏美(著)
日本放送出版協会; 〔カラー版〕版 (1986/11)
P98

山伏まんだら―求菩提山(くぼてさん)修験遺跡にみる (NHKブックス)

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DSC_4740 (Small).JPG求菩提山


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