シーボルト台風 [雑学]
シーボルト台風の高潮については、気象庁の小西達男氏が「一八二八年シーボルト台風(子年の台風)と高潮」という論文を書いている。
被害は北部九州一帯と長府藩(山口県下関市)に及び、一万九一一三人が死亡した。
シーボルトの気圧計による観測などから、この台風の規模を推定すると、中心気圧九三五ヘクトパスカル、最大平均風速は五五メートル、上陸前後の時速は五五キロになるという。
速くて風も強いこのモンスター台風が満潮時の有明海を直撃した。小西氏は、何メートルの高さか推計している。佐賀県の筑後川河口付近では四・五メートルを超え、周防灘でも四メートル、博多湾でも三・五メートル以上の潮位偏差になるという。
~中略~
近代の気象観測史上、最大の高潮は伊勢湾台風の三・八九メートルとされる。それをはるかに超える高潮だ。本当だろうか、と思ったが、自分の目で古文書を調べてみて、小西氏の高潮の高さ推計は大げさでないと確信した。
私が注目したのは「前代未聞実録記」(「浮世の有様」所収)という大坂商人が記した史料である。佐賀城下に商用で出張中であった大坂商人が、前代未聞の台風と高潮被害に行き当たり、一部始終を記録している。~中略~
史上最悪のこの台風の高潮が有明海沿岸で五メートルを超えたのは間違いなさそうである。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史
(著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P115
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- 作者: 磯田 道史
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- 発売日: 2014/11/21
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